慣らし運転でベールを脱ぎ始めた。オリックスに新加入したアダム・ジョーンズ外野手(34=ダイヤモンドバックス)が、宮崎キャンプで来日初の屋外フリー打撃を行った。「1週間ぶりに外で打ったよ。(室内の)ケージで打つ方がボールがすぐに拾えていいんですけどね」。メジャー通算282発の右の大砲は、力感のないスイングから軽やかに外野へ打球を運んだ。61スイングで柵越えは2連発を含む7本だった。

「打球の感触を確かめるため」素手で打つのは、通算449本塁打で米国野球殿堂入りした元同僚のウラジーミル・ゲレロ氏から教わった。初日は、しなやかなバット操縦から右方向へ打球が目立った。ただ、あくまでも調整段階で「ボールがどこに飛ぶのかは意識していない。しっかり捉えることだけを考えた。外角に来れば反対方向、内角に来たら引っ張ろうと思ってました」と控えめだった。

通算1939安打、ゴールドグラブ賞4度のジョーンズを見ようと、午前10時には球場近くの400台入る駐車場が満車になるなど盛況だった。他球団の「007」も目を光らせ、3年連続日本一のソフトバンク竹口スコアラーは「グリップ位置が安定しているので打率を残すと思う」と言えば、2年連続リーグ王者の西武亀井スコアラーも「本物。見てて楽しいぐらい」と興奮していた。

そのジョーンズも参加して「外野手会」が開催されそうだ。ノック中に「大きな家に住んでるらしいですね」「今度また外野手で食事に行きましょう」など新しい仲間から声を掛けられ、コミュニケーションを楽しんでいる。もっとも、食事会については「ジョーンズ選手がおごるんですよ、と言われました」と笑って明かした。仕掛け人は「ラオウ」こと杉本。2年総額8億8000万円+出来高払い2億2000万円(金額は推定)で契約した助っ人には安いものかもしれないが、温かい歓迎で確実にチームにとけ込んでいる。【真柴健】

◆球界の素手選手 長嶋茂雄、王貞治(ともに巨人)、落合博満(ロッテほか)、掛布雅之(阪神)ら、往年の強打者は手袋を使わずに打つ選手が多かった。近年では、手袋の製品の改良などで、素手で打つ選手は減少。それでも素手の感覚を大切にする選手も残っており、99年巨人戦で敬遠球をサヨナラ安打した新庄剛志(阪神)は、直前に手袋を外していた。昨季は青木宣親(ヤクルト)が、左手だけ素手というスタイルで打席に入っていた。