“DeNAファン心のふるさと”として名高いテレビ神奈川が「おうち時間に盛り上がろう! プレイバック熱烈LIVE」と題して、ベイスターズの名勝負をピックアップ放送している。

開幕を待ちこがれるハマっ子は当然、チェックを欠かさない。放送直後は、ツイッターのトレンドランキングで上位に食い込むこともある。19日午後7時からの放送は、昨年8月9日、中日に快勝した1戦。ラミレス監督が筒香を5年ぶりのサードで起用する用兵を繰り出し、主砲が満塁アーチを含む2発、7打点で応えるという失神もの! のゲームでした。

この日、当番デスクだったんですが…担当の栗田尚樹記者からの電話報告を受けて興奮し、試合前に1面を即決したことを覚えています。日刊スポーツ復刻版でも余韻を味わって下さい。

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<2019年8月10日付日刊スポーツ東京本社版1面>

ラミちゃんの大勝負に応えた。DeNA筒香嘉智外野手(27)が、14年5月5日広島戦(マツダスタジアム)以来となる三塁でスタメン出場。満塁本塁打を含む2発7打点と暴れて中日を一蹴した。不動の正三塁手宮崎が、左有鉤(ゆうこう)骨骨折で離脱。アレックス・ラミレス監督(44)が禁を解いた「サード筒香」の重い決断に最高の結果で報いた。首位巨人とのゲーム差は1のまま。攻撃力を落とさず、力強く追う。

 

ラミレス監督は顔色ひとつ変えなかった。いつもと変わらぬ試合前の囲み取材。多くの報道陣を前にドンと構え、うなずき、受け答えを繰り返した。ただ…振り返れば、いつもと違うところが1つあった。スタメンを聞かれたところで「1番神里、2番筒香」。ポジションを伏せた。囲み取材が終わると、あちこちから「中井がサードか」の声が上がった。

3時間後。誰もが裏切られた。記者席でスタメンの紙が配布されると「え?」という声が上がった。ハマスタのスタジアムDJは、つゆ知らず。軽快なアナウンスでコールした。「サード・ベースメン・筒香~~」。イケイケのBGMが流れる中、純なベイ党たちも、さすがに面食らった。普段は盛り上がるシーンで、まさかの静寂。数秒後、大きな拍手が送られた。

三塁の守備位置へ、筒香が5年ぶりに走りだした。

試合前の練習。左翼でノックを受け終わると、三塁でノックを受けた。「自分のグラブです。だいぶ前のやつですけど」。宮崎が左有鉤骨骨折で抹消された8日も三塁の練習をこなしていたが、柴田が広島戦のスタメンに名を連ねていた。「いつかは、やるのかな」の声はあったが、まさかの起用だった。

ラミレス監督は8日に、筒香と三塁挑戦について話し合っていた。「チームが勝つためなら何でもやらせてください」という粋な答えが返ってきた。「インパクトの部分では、筒香が三塁というのは十分。けが人が続出する中で、主軸中の主軸がカバーすることで他の選手に与える影響も大きい。現実的にも、筒香が三塁に入ることでレフトが空く。今の外野陣も調子がいい」と攻撃重視の断を下した。

2点を追う1回に4年連続の20号ソロを放てば、同点の5回には156キロのアウトハイを21号満塁弾。守備機会は1回だったが、ビシエドのゴロを難なく処理し「できる最大限の仕事をするだけ」と言った。

度肝を抜く用兵での大勝。ラミレス監督は「試合前のスタメンは、ラインアップを聞かれたから、ラインアップを言っただけ。ポジションは聞かれていない」とけむに巻いたが、監督と金看板の固い絆が背景にはあった。【栗田尚樹】

 

<とっておきメモ>

チーム思いの主将が、自己最多の「7」打点をたたき出した。普段から「自分のことよりも」。「チームの勝利のために」を言い続ける男。そんな思いがあるからこそ、チームを大勝に導く大活躍につながったのかもしれない。開幕前、横浜スタジアムで行われた全体練習。筒香の足元には「7」としるされたソックスがはかれていた。普段から仲がいい、横浜高の先輩でもある石川のものだった。

開幕を2軍で迎える先輩を体の一部に身につけ、同じフィールドにいた。そんな大好きな先輩が、4日の巨人戦で通算1000安打を達成した際には、人目もはばからず、抱き合った。球団スタッフが用意したケーキを自ら運び「おめでとうございます」とほおをゆるめた。主将として、主砲として-。お立ち台では、もちろん「チームがいい位置にいる。それがエネルギーになっています」と、フォア・ザ・チームの姿勢を一貫した。