トライ復活! オリックス伏見寅威捕手(30)が、左アキレス腱(けん)断裂から復帰して昨年6月9日ヤクルト戦以来、約1年ぶりの先発マスクをかぶった。追いついて引き分けた試合で明るい材料の1つが背番号23だった。「全く出てなかったですからね、試合に。でも僕の中では不安よりも楽しみな日でした」。先発山崎福を5回まで無安打無失点でリード。バットでも4回に左翼フェンス直撃の三塁打を放ち、6回は今季1号ソロ。プロ8年目で初めて京セラドーム大阪にアーチを描いた。6回で若月と交代し「試合に出る以上は体を整えて、最後まで出たい」と貪欲だった。

東海大で菅野(巨人)とバッテリーを組んだ男は根っからの捕手気質。磨いた「対話力」で仲間を鼓舞する。リハビリ期間も心は常に「1軍戦力」だった。2月の宮崎キャンプでは主砲吉田正を食事に誘って打撃理論を語り合い、ラオウこと杉本がバットを軽くしたと聞けば理由を取材した。山本とも話し込み、年の近い吉田一、西野らファームで調整していた中堅組とも「1軍で勝つために」と息を合わせた。

長いリハビリ生活で伏見の足を支えたのは松葉づえでも車いすでもない。落ち込みそうな逆境で背中を押してくれた愛妻の存在だった。「試合が終わると連絡をくれるんで、いつも気にしてくれていると思います」。ふと「早く1軍に戻りたいな」と漏らしたこともある。理由は「素直に(妻に)ありがとうって言いたいよね…」。支えて、支えられて。真っすぐな心で人を思うから、強くなれる。【真柴健】