ZOZOマリンが一気に熱くなった。場内アナウンス担当・谷保恵美さんの声が響く。「ご来場のファンの皆様、ZOZOマリンスタジアムにおかえりなさい! 皆様のお越しをお待ちしておりました」。5000人の拍手は、音量測定器で80デシベルをマークした。

プレー1つ1つに、拍手が鳴る。無観客では平均48デシベルで進んだ試合が、有観客のざわめきでは平均58デシベルに上がる。3点先制されての1回裏。1番荻野の安打には83デシベル、2番マーティンの連打には85デシベルの拍手が響いた。無死一、三塁。3番菅野の二ゴロに73デシベルのため息が出るが、三塁走者荻野が忍者のようにタッチを避けてホームインすると、拍手は93デシベルに跳ね上がった。

やるべきことは、観客の有無では変わらない。でもある日、正捕手の田村が言った。「やっぱりお客さんがいないと、アドレナリンがなかなか上がらないっていうのはあるかな…」。その田村が遊ゴロで一塁へヘッドスライディング。アウトになったが、球場中から80デシベルの拍手をもらった。

主砲もやっぱり、この空間を意気に感じた。「いい雰囲気。この感じが戻ってきたな」と実感しながらの3回1死一、三塁。5番井上が左中間に逆転の3号3ランを放つと、打った瞬間に91デシベルの歓声が上がった。守備につき心を込めてファンに頭を下げると、87デシベルの拍手で球場が1つになった。勝敗は大事だ。勝敗以上に大事なものもある。海風に乗る拍手の数々は、たまりにたまった野球愛の証し。本来の開幕から遅れること112日、スタジアムに熱気が戻った。