阪神打線の充実ぶりを物語る超攻撃型オーダーが機能した。

狭い神宮の一戦を前に矢野燿大監督が思案した。目玉は「2番糸井」だ。用兵は1回から的中した。1番近本光司外野手が敵失で出塁直後、糸井嘉男外野手がイノーアの沈むチェンジアップを的確にとらえて中前へ。プレーボール直後から攻め立て、一挙3得点の先制をお膳立てした。

糸井の先発2番は阪神移籍後2試合目で、19年4月19日巨人戦以来だ。クリーンアップのジェリー・サンズ内野手、大山悠輔内野手、ジャスティン・ボーア内野手が4試合連続で固定される。中軸が好調だからこそ、パンチ力のある2番糸井は脅威だろう。矢野監督は「健斗(糸原)がケガしたことで2番がどうなのかなと探りながらやっていた。みんなを試せるようなところに状態が上がってきている。ハマったとまでは俺も言いにくい。嘉男もまだまだ上がる」と話した。

ジャブを打ち続けたのは1番近本だ。2回は四球で出塁してボーアの満塁弾を呼んだ。3回はセーフティーバントに成功し、塁上で坂本のけん制悪送球を誘うなど再び生還。4回も快足を飛ばして一塁内野安打でまたもホームへ。6回は先頭で四球出塁し、6点の猛攻の点火役になった。この日は球団最多タイの1試合5得点で大勝に貢献した。

「僕のなかでは、今日はそれが一番良かった。後ろの打者がチャンスでかえしてくれる。そういう場面を多く作れてよかった」

今年は不振が長引いたが26日中日戦で6戦ぶりに先発復帰すると今季初の4安打。頼みのリードオフマンが息を吹き返しつつある。近本は「記録は知らなかったですけど得点はシーズン前からこだわっていきたいと言ってきた数字」と胸を張れば、指揮官も「ああいう(会心ではない)安打が出ると波に乗れる前の感じと思いたい」と期待する。今季初めてチーム総得点が総失点を上回った。主砲が猛威を振るうだけに1、2番コンビが躍動するほど「鬼に金棒」の布陣になる。

▼近本が1~4回まで連続得点し、阪神の1試合最多タイとなる5得点を記録した。連続イニング得点の記録は過去2人がマークした5イニングがあるが、4イニングはセ・リーグ14人目のタイ記録。阪神では02年5月3日広島戦のホワイトに次いで2人目。

▼近本は打率を2割3分5厘とし、ヤクルト山田哲を抜いてセ・リーグ最下位を脱出した。今季の同一カード初戦12試合で36打数13安打、打率3割6分1厘の好成績だ。