真っ向勝負で奪三振ショーを繰り広げた。巨人戸郷翔征投手(20)が7回途中3安打無失点、11奪三振で6勝目を挙げた。5日の阪神戦に続き、今季2度目の2桁奪三振。20歳で2度の2ケタ奪三振は、50年の2リーグ制以降、球団史上17年ぶり3人目となった。開幕から快投を続け、広島森下との新人王争いでも1歩リード。高卒選手が新人王を獲得すれば、球団では83年の槙原寛己氏以来37年ぶり。真っすぐに歩みを進める。

「勇」ましく、阪神の5番を張る大男に挑んだ。戸郷は4回1死、2ストライクから147キロ直球でボーアの懐をえぐり見逃し三振を奪った。相手クリーンアップから直球で4つ目となる奪三振。中軸から奪った5Kのうち、変化球は7回に奪ったフォーク1度だけ。真っ向勝負、力でねじ伏せた。「大きな収穫点だと思います」と振り返った。

「猛」烈に意識する言葉がある。黒色のSSKグラブの内側には「勇猛果敢」と金色の刺しゅうで文字を入れている。中学を卒業するころ出合った言葉で「何か1つそういうのを持ちたい」と調べた結果、目に飛び込んできた。「一番自分に合ってるのかな」と今でも大切にし続ける。この言葉を胸に、中軸以外も直球で封じた。自己最多11奪三振の内訳は、直球7、スライダー2、フォーク2。10三振を奪った前回対戦の5日は、直球2、スライダー7、フォーク1だった。「真っすぐで押していこうと、自分だけの考えですけど」と意識を置いた。

「果」たすべき役割があった。菅野の完封から始まった2戦連続無失点の流れを受けて臨んだ、プロ入り初の中5日のマウンド。堂々たる投球で25年ぶり同一カード3試合連続完封に導いた。しかも伝統の一戦でだ。原監督は「あれだけ三振も取れるしね、ゲームを作れるという部分においては、いい兆し」と評した。

「敢」えて配球は変えていない。前回対戦では106球中直球が52球。同じ106球中、この日は48球。それでも決め球として機能し「投球の軸としておかなければいけない球。どれだけ磨けるか。相手にどれだけ嫌な印象を与えるか」と結果は自信となった。プロ2年目での新人王に向け、1歩前進。戸郷は「高校の時から三振にこだわってやってきた。自分にとっても野手にとっても三振が一番楽なアウト。意識しながら投げています」。弱冠20歳の青年が「勇猛果敢」に強打者に挑む。【久永壮真】