キャプテンがチームの緊急事態を救った。日本ハム西川遥輝外野手(28)が初回無死一、三塁から決勝の先制適時打を放った。

右ふくらはぎ打撲で欠場した「不動の3番」近藤健介外野手(27)に代わって、今季初めて3番打者としてスタメン出場。2安打1打点と期待された役割をきっちりこなして、チームを勝率5割復帰に導いた。

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西川の言霊が、電光石火の決勝点につながった。主将は苦笑いしながら、試合前を回想した。「本当に、言っていたんですよ。『一、二塁じゃダメだ。一、三塁を作れ』って」。自身の前を打つ1番杉谷、2番松本の帝京コンビに投げかけた言葉が、初回に現実となった。杉谷が安打で出塁し、松本がバスターエンドランを決めて無死一、三塁。たった3球で要求していた場面が訪れた。

西川 すごい緊張しました。本当に(一、三塁に)なって、一番プレッシャーがかかりました。本当に、なるんだって。

驚きはポーカーフェースで隠し、勢いそのままに初球をとらえた。打球は一、二塁間を鋭く抜けて、先制の右前適時打となった。一塁ベース上では指令に応えてくれた松本、そして杉谷を指さして感謝の合図を送り、ホッとしたように笑みをこぼした。

21日の試合で自打球を右ふくらはぎに当て、欠場を余儀なくされた近藤のためにも打ちたかった。ヒーローインタビューの冒頭。「今日は3番に入ったということで、近藤“さん”の代わりはできないと思いましたけど…」と、あえて1学年後輩の不動の3番打者を「さん付け」で表現。「ずっと試合に出て頑張っていたので、少しでも安心して休ませられるように」との思いを体現した。

適時打を放った後には近藤に「ゆっくり、2週間休んでくれ」とちゃめっ気たっぷりに伝えたという。今季初の3番起用は「新鮮だった」と振り返ったが、近藤の早期復帰を祈る気持ちは強い。「チームとしては痛いですけど、したくてしたケガじゃない。みんなでカバーしていければ。これがチーム力だと思うし、1試合だけじゃなくて戻ってくるまでカバーしないといけない」。主将の言葉は、やはり重みがある。有言実行でチームを引っ張りながら、近藤の戦列復帰を待つ。【木下大輔】