30年前の次は、82年前の球団史に再びスポットライトを浴びせた。巨人菅野智之投手(30)が、7回2失点の好投で開幕戦から無傷の9連勝。球団では90年の斎藤雅樹を超え、38年春のスタルヒン(11連勝)以来2人目の快挙を達成した。自身3戦連続で連敗ストップのかかるマウンドでエースの投球。バットでも走者一掃の適時二塁打でダメ押しし、試合前時点で通算1勝6敗の鬼門神宮で4年ぶりの勝利を挙げた。

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無敵の菅野でさえ、一瞬悪夢がよぎった。1回、先頭の坂口からわずか5球の3連打で先制点を許した。「何点取られるのかなという感じだった」と吐露した大ピンチ。状態や相手打者との間合いなどを見極め、多種多様な投球フォームを使い分ける男が、決断したのは精度がアップしたフォークを駆使する配球の変化だった。

冷静な分析から、プロ8年目で新たな発想が生まれた。初回は「ある程度構えたところに投げて、うまくコンタクトされた」中で2失点。「思い切って、今までにない配球を」と捕手の大城と攻め方を再構築し、スライダー、速球系中心から初回は13球中、ゼロだったフォークを若いカウントから多投。2回は山崎の初球、3回は坂口の2、3球目、4回には村上の2球目に投じ、幻惑した。

使命は「勝つこと」だった。チームは3連敗中で、自身にとっては3戦連続で連敗ストップがかかるマウンド。今年1月、背番号「18」を背負って、迎える2年目のシーズンを前に「エース」とは、の問いに即答した。「1年間マウンドを守り抜く。そして、勝つこと」。新フォーム同様、マウンドでも変化を恐れず、7回2失点で開幕戦から無傷の9連勝を飾った。

菅野 意識しない人はいないと思いますし、負けるより勝ちたいです。毎試合勝ちたいという気持ちが連勝になればいいと思っています。ここまで来たら、勝ち続けたいです。

原監督も、もちろん菅野も生まれる前の82年ぶりの記録を鬼門の神宮で打ち立てた。巨人の中島治康が史上初の3冠王を達成したのはその秋。歴史を引き出すように、走者一掃の適時二塁打を放ち、バットでも貢献した。「気持ちが切れそうになったけど、修正して勝てたのは財産になる」。優勝を決めながらも「今年は何もしてないです」と目を赤くした日から約11カ月。球団史にその名を刻む連勝街道を突き進む。【久保賢吾】