阪神高橋遥人投手(24)が球児魂全開で粘り、劇的なサヨナラ勝利を呼び込んだ。プロ3年目の成長が表れたのは7回だ。同点に追いつかれ、制球も乱れて満塁になった。ヤクルトは代打青木の勝負手だ。しかも3ボールと追い込まれ、押し出し四球寸前。だが、内角低め速球で見逃しストライクを奪うと、最後も外角146キロ速球で押し込んだ。遊ゴロに詰まらせ、1点でしのいだ。

この窮地で腹をくくったのは矢野監督だ。「迷ったしね。球数もどんどん増えていっていた。次は投手に回る。一番難しい場面だった。あそこまでいってくれた。遥人に任せる。例え打たれても俺の責任として受け止めるような内容で投げてくれていた」。継投しない。勝負の分岐点で踏ん張ったからこそ価値がある。指揮官は感心して言う。

「去年も勝負どころで悔しい思いをしている。1点で粘ってくれたからこそサヨナラにつながった。一気にひっくり返されることもなく。そこも成長ですね」

特別な1日だった。投手陣のリーダーだった藤川が引退会見に臨み、その後、甲子園のクラブハウスで激励。感謝の思いを白球に込めた。序盤から140キロ後半の速球は球威抜群。カットボールなど変化球も低めに制して、まったく危なげない。首位打者を争う4番村上も圧倒した。1回は外角低め速球で見逃し三振。4回は低く沈む変化球で空を切らせて、充実ぶりが光る。力投しても「試合は作ることができたと思いますが粘ることができず悔しいですし、野手の方の守備にも助けられていたので抑えたかった」と反省した。

この日は白星こそつかなかったが7回1失点。今季は4戦連続7イニング以上を投げ、防御率0・93の安定感だ。次代を担うエースへ。苦境で踏みとどまれてこそ大黒柱の資格がある。