若手の台頭で勢いづくロッテが、首位ソフトバンクに0・5ゲーム差と迫る。6日の直接対決で決勝弾を放った4番安田尚憲内野手(21)が象徴的だが、昨季は1軍出場ゼロ。2軍で本塁打王と打点王の2冠に輝き、3年目の飛躍に備えていた。安田の背中を追い、18年ドラフト1位の藤原恭大外野手(20)が今、2軍で英才教育を受ける。ロッテの未来を築く「入団2年目」に潜入する。

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オンラインの向こうで、藤原は真っ黒に日焼けしていた。「危機感があります」と何度か口にした年始と比べると、吹っ切れた表情だ。「自分は自分。周囲は意識せずに、やりたいことをやっています」と充実ぶりをにじませる。

甲子園春夏連覇の偉業をひっさげて、大阪桐蔭からドラフト1位で入団。1年目から1軍開幕戦のスタメンに選ばれるなど、スター誕生を予感させた。プロ2年目の今、ファームにいる。井口監督からは3月に「2軍で力をつけてほしい」と指示された。1軍の4番安田の、ちょうど1年前と同じように。

寮のテレビで見つめる。「1軍でもフォームを変えて、すごく対応しているなと思います」と先輩打者に刺激を受ける。去年の安田と同じように、藤原にも休む間はない。イースタン・リーグは44試合を消化。藤原はそのうち41試合が1番でのスタメンだ。

ペナントレースは長い。「フルで試合に出続けて感じるのは、疲労は結果に大きく関係するなと。まだまだ1年間を戦う力はないなと感じます」。英才教育は体力強化の意味合いも強い。「ヤス(安田)は去年ファームでほぼフルでしたし、上で休ませることはあまり考えていません」と井口監督。技術を高めつつ、失速しない体力を育む。

万事うまくは進まず、悩みもある。ここまで打率は2割3分6厘、4本塁打。何よりリーグワーストの55三振が目立つ。7月中旬から下旬に34打席連続無安打。15打席で10三振という時期もあった。「雑になって、引っ張りに行って、だんだん崩れていったのかなと」。

どん底での思考がすごい。「安打が出ないなら、切り替えて本塁打を狙おうと。いつもならやらないことをやりました」と自慢の脚力に目を向けず、フルスイングを貫いた。今岡2軍監督も「結果なんて見てない。三振しても堂々と帰って来い」と背中を押した。安田も昨季は2軍で年間109三振。逃げずに場数を踏み続け、引き出しを増やしてきたから今がある。

5年後は1番中堅藤原、4番三塁安田、エースは佐々木朗希-。球団もファンもそう夢見る。「来年は3年目。何番でもいいので1軍で。さらに磨きをかければ、来年につながるカギは見つかっていくと思います」。9月に入ってからは5試合10安打で、打率4割1分7厘。藤原らしくなってきた。【金子真仁】

▽ロッテ福浦2軍ヘッド兼打撃コーチ 藤原はスイングに関して持っているものは良く、スイングスピードは速い。試合に出続けての調子の波が課題。バットを振るスタミナ、試合に出続けるスタミナをつければさらに良くなっていく。

◆藤原恭大(ふじわら・きょうた)2000年(平12)5月6日、大阪府生まれ。大阪桐蔭では4度甲子園に出場。通算5本塁打を放ち、17年春、18年春夏の3度優勝。18年ドラフトで3球団競合の末、ロッテに1位で入団。19年の開幕戦で高卒新人では球団54年ぶりのスタメン出場を果たし、プロ初安打もマーク。今季推定年俸1500万円。181センチ、80キロ。左投げ左打ち。