阪神秋山拓巳投手(29)が堂々の自身5連勝だ。3点の援護を受けた直後の2回、4番鈴木誠からの打順を5球で3者凡退。1回も速球主体の7球で抑え、テンポの良さが際立った。

今季初のデーゲーム登板はシーズン5度目の広島戦だ。「同じようにやるスタイルではなかなか抑えられない」。試合開始からワインドアップだったが、3回だけ先頭からセットポジションで投球。4回は再び腕を振りかぶった。工夫し、梅野とのコンビもさえた。

6回1死一塁。長野を内角シュート系で詰まらせ、二ゴロだ。併殺こそ逃したが注文通りだ。同学年の梅野も「特に真っすぐが良かった。併殺を取りたい場面やフライを打たせたい時にインコース真っすぐを今日は多く要求した。要求通りに投げてくれた」と言う。

発奮材料があった。9月上旬、チームに1通の手紙が届いた。差出人は秋山の母校、愛媛・西条の野球部だ。選手らが高校3年生に贈った「甲子園の土」キーホルダーに対する感謝が記されていた。秋山も文面を読んだ。「一人一人はこれまで培った多くのものを今後の人生に生かし、前向きに顔晴ろうと決意しています」。自然と力がわいた。

秋山が投げるたびに「ウッ!」と絶叫が響く。1球入魂だった。今季広島戦は5戦3勝、防御率1・78でいまや立派なコイキラーだ。「前回、マツダで投げて以降、ちょっと良くなった感覚があった。序盤、思った以上に打者が詰まってくれていた」。6日の巨人戦先発が雨天中止になり、中12日は8回途中1失点。気迫満点で1カ月ぶりの白星をつかんだ。【酒井俊作】

▽阪神矢野監督(秋山について)「気持ちも前面に出て、その中でもアキらしく丁寧に、できることをしっかりやって長いイニングを投げてくれた。本当にナイスピッチングでした」