阪神ジェリー・サンズ外野手がお目覚めだ。コロナ禍で大量離脱の3連敗中…。重苦しいムードを消したのは1回だ。2死二塁。ヤクルト先発吉田喜の初球、内角速球を痛烈に引っ張って左前に運んだ。

幸先のいい先制タイムリーだ。「近本が仕事をしてくれて先制のシチュエーションを作ってくれたので、なんとかかえそうと思っていた」。前日までの10戦は35打数5安打、打率1割4分3厘。前夜は来日初のセーフティーバントを敢行したほどの不振だった。

この日は違う。敵の人気マスコットつば九郎の“前祝い”に応えた。試合前に「あすはTさんずのたんじょうびです」「ちなみにさんずだけに33さいだそうです」と書かれたスケッチブックを掲げられた。32歳最終日は攻守でハッスルだ。

1点リードの4回2死二塁。守備でもエスコバーの左翼への浅い飛球を地面スレスレでダイブ捕球し、失点を阻んだ。「秋山が頑張っていた。後ろで自分のできることをしようと」。5回に左前打を放つと7回は忠実に中前へ。「少しスランプ気味だったけど、なんとか抜け出せた」。迷いのないバットさばきがよみがえり、9月11日広島戦以来、14試合ぶりのマルチ安打となる猛打賞だ。晴れやかに33歳を迎える。