阪神は9日、揚塩健治球団社長(60)が12月1日をもって辞任すると発表した。3月と9月に複数の新型コロナウイルス感染者が相次いで出るなどチームの混乱を招いたことの責任を取った。揚塩社長は兵庫・西宮市内の球団事務所で会見し、陳謝した。18年10月に最下位低迷による金本知憲監督の辞任に伴い、当時2軍監督だった矢野監督の就任要請に動いた人物だった。後任は未定。

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揚塩社長はコロナ感染者が出たことだけで辞任にいたったわけではない、とした。そうだろう。現在の情勢でコロナ感染についてゼロリスクはあり得ない。同社長は「着任以来、1つ1つの事案をここでは申し上げませんが、そういった混乱を招いたこと、これは球団内の最終責任者は私」と語った。

着任以来の混乱という言葉を借りれば、18年オフは金本監督退任に関するものがあった。19年には功労者の鳥谷(現ロッテ)の処遇について。そして今年。コロナ禍において、球団の管理能力と選手各自の状況判断が求められる中、外食や遠出にまつわる騒動が春先から出て回った。揚塩社長が今季限りで辞任することになったが、強く願う。チームが一丸であってほしい、と。

藤原オーナーはこの日、今季の騒動についてこう語った。「PCR検査も順番にクリアしながらやってきた中で、気の緩みと言うか、そういうのもあったのかな」。そして、続けた。「プロ野球チームはチームワークをもってプロフェッショナルの力を発揮する。こういうことだと私は思っています。その中で1人1人がチームの中でどういう役割をするか。こういう自覚をもう1度、しっかりと持ち直す必要がある。選手だけじゃない。チームスタッフもそうだし、チームのいろんな仕事をしている人たちがみんな、自分の役割を再確認してもらうよう強く要請したいと思います」。

まさにその通りだろう。9月の一件では、球団内規を破った選手はその点の責任を痛感するべきであろうし、球団は内規を設けるだけでなく、どうすればその意図を1人1人が理解し、自覚を持って行動できるようになるのか、よく考える必要がある。首位とは大きく離されていたが、シーズンがまだ3分の1ほど残っている中で、10選手の大量離脱を防げなかった。フロントも選手も「日本一」という目標への“献身”を忘れてほしくなかった。

揚塩社長は言う。「志半ばという面では、矢野野球。超積極的で諦めない、誰かのために。この野球が開花してほしい」。それが実現できるか。チームに関わる全員が勝利への思いを中心に一丸となれるかにかかっている。【報道部次長兼阪神担当キャップ=松井周治】