二盗!三盗!本盗!ヤクルトの若き4番村上宗隆内野手(20)が、足で見せた。

2回、右前打で出塁すると、すかさず二盗、さらに三盗、ホームスチールまで成功し、人生初の1イニング3盗塁でプロ野球タイ記録をマーク。セ・リーグでは53年土屋伍郎(国鉄)以来、67年ぶり3人目となる“サイクルスチール”を達成した。

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燕の主砲村上が、足でも球史に名を残した。6-1で迎えた2回2死、2打席連続で右前打を放った。「行けたら行け」のサインを確認。5番宮本の初球、捕手が送球できないほど完全に盗み、二盗に成功した。冷静に阪神西勇を観察した。2死一、二塁。「投手も慌てていたし、テンポが一定だった」。行けると判断し、6番西浦の2球目に一塁走者宮本とダブルスチール。これも完璧だった。

さらに2死二、三塁、西浦への4球目の前。落ち着けないままの相手バッテリーに仕掛けた。二塁走者宮本がリードを大きく取り、けん制を誘った。右手から白球が離れると同時に、地面を蹴った。188センチ、97キロの体格だが、身のこなしは軽やか。「とにかくホームだけ見て走りました」。スライディングをしながら、左手でベースにタッチ。「すごくうれしい」と笑った。

昨季、高卒2年目以内で歴代最多タイの36本塁打、同最多の96打点をマークしたセ・リーグ新人王は、足も速い。熊本東リトルシニア時代には、卒団した秋以降も練習に通い、下級生と走りのメニューから手を抜かずに下半身を鍛え続けた。九州学院時代から50メートル走6秒1の俊足だった。

積極的に足をからめる作戦を出す高津監督のもと「バッティングで飛ばすのも、走るのも体の使い方」と走塁技術も成長中だ。「遅い方ではないので。いいスタートが切れたり、いい判断ができたら盗塁は決まる。磨いていけたら」。打って、走れる最強の4番打者だ。【保坂恭子】