<パ・クライマックスシリーズ:ソフトバンク4-3ロッテ>◇第1戦◇14日◇ペイペイドーム

ソフトバンク柳田悠岐外野手(32)が「無敗弾」でチームに日本新となるポストシーズン11連勝を呼び込んだ。2点を追う4回無死、中越えに推定飛距離145メートルのソロを放ち反撃ののろしを上げると、6回無死では中前打で同点劇を演出した。ポストシーズンでは自身8本目の本塁打となり、打った試合はチーム8連勝。主砲の1発から逆転勝ちし、日本シリーズ進出に王手をかけた。

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柳田のバットが、下克上を狙うロッテの出ばなを強烈に粉砕した。単純に結果を出したから取り上げるわけではない。打席内容を見る限り、実力は明らかに突出している。柳田を抑えない限り、ロッテには勝ち目がないという試合だった。

今CS前、ロッテが勝つためには、何が何でも初戦の勝利が必要と思っていた。先発は今季ソフトバンクに対して5勝1敗、防御率2・70の美馬。シュートを武器にする右腕は、左打者に3割1分3厘と分が悪いが、右打者は2割1分3厘と抑えていた。

左の強打者では柳田、中村晃が思い浮かぶ。中村晃は2割3分5厘と封じていた。10打席以上の対戦があって3割以上をマークしているのは、柳田の3割6分4厘と、周東の3割5分3厘だけ。左の強打者が少ないソフトバンクにとって、2人のうちどちらかでも抑えれば、勝てる可能性がグッと上がるはずだった。

周東は完璧に抑えたが、柳田は違った。2打席目、内角カットボールを続けて2ボール。3球目も内角カットボールだったが、見逃せばボールかもしれない低め。これをバックスクリーン左へ運んだ。“交通事故”に遭ったような、衝撃的な1発だった。

さらに圧巻は第3打席。初球は内角スライダーを豪快に空振り。2球目は外角直球を見逃しストライク。バッテリーは「内角を狙っている」と感じたのだろう。強打者に内角を意識させるのは配球の定石で、ここまではうまく運んだ。

だが、外角の変化球を2球続けて見逃されてボール。5球目に再び内角スライダーをファウルすると、6球目の外角直球を中前打。十分に内角球と変化球を意識させたにもかかわらず、少しだけ浮いた高めの直球をヒットされては、抑えるすべが見つからない。

単打を打たれても、得点に絡ませなければいい。そんなマークをかいくぐって2得点に絡んだ。攻め方を見ても「これで打たれたら仕方ない」というもの。痛いのはミスで失った3点目だが「ミスすれば勝てない」と思わせるのも柳田の存在があるから。走力もあり、長打力もある柳田ほど嫌な3番打者はいない。【小島信行】

◆CSの主なルール 今季はパ・リーグだけ実施し、優勝のソフトバンクと2位ロッテが対戦。ソフトバンクの本拠地ペイペイドームで開催する。ソフトバンクにアドバンテージの1勝が与えられ、4試合制で勝利数の多いチームが日本シリーズに進出。引き分けを除いた勝利数が同じ場合はソフトバンクが進出する。延長戦は10回まで。10回表終了時や10回裏の攻撃中に後攻の勝ち上がりが確定した場合、その時点でコールドゲームとなる。