98年横浜の日本一監督で日刊スポーツ評論家の権藤博氏(81)が、与田中日が来季目指す10年ぶりV奪回の方法論を提言した。「力でつかんだ」と8年ぶりのAクラスを評価した上で、打倒巨人には投手力を中心とした守り勝つ野球の徹底が重要と指摘。「ファンあってのプロ野球」と球団の広報戦略にも一石を投じた。

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中日が一定以上の戦力を保持しているというのは、私の一貫した見方だった。課題は抑え投手と捕手の固定とも指摘もしてきた。その視点から今季を振り返ると、抑え投手にR・マルティネスが定着し、木下拓が正捕手に大きく前進した後半戦は勝ちパターンも確立され、着実に勝率を上げた。力でつかんだAクラス。来季に自信を持って臨んでほしい。

もっともセ・リーグで巨人の壁は高く、容易には越せない。だが、中日の戦力バランスはいい。来季、優勝するための課題は何かと問われれば、明確な戦略のもと、柔軟な戦術を用いてシーズンを戦い抜けるかどうかにあると答えたい。

今季もリーグ最下位に終わった70本塁打に象徴されるように、長打力に欠ける部分は否めない。だが、もっとも本塁打が出にくいナゴヤドームを本拠地として戦う以上、この宿命にあらがっても仕方ない。充実した投手陣と内野の守備力をより高めることをベースに、打倒巨人に挑んでもらいたい。

その中で最大の焦点はR・マルティネスだ。抑え投手は2年続けて結果を出してこそ本物。より重圧の高まる中で今季並みの活躍を見せてくれれば、巨人と互角の戦いが展開できるはずだ。もっともエースの大野雄や福、祖父江といった大車輪の活躍をしたリリーフ陣に、今季以上を期待してはいけない。そこは状況を的確に見極めた上での戦術対応が必要だろう。

最後にひとつ、気になったのは広報戦略だ。今季途中から出場選手登録を抹消される際に「上肢」「下肢」や「体幹コンディション不良」といった意図不明の言葉を耳にした。プロ野球はファンあってのもの。一部の例外を除けば、応援してくれるファンに対してできる限り丁寧な情報開示をすべきだろう。ましてや選手個々がSNSなどを通じて自ら発信できる時代に、中途半端な情報管理にどれほどの意味があるのだろうか。コロナ禍で入場制限などが続けば球団経営も苦しくなり、分断化も進みかねない。だからこそ正々堂々、ファンとともに覇権奪回に挑んでもらいたい。