4番キャプテンの重責、全うします! 今季から野手の新主将に就任した阪神大山悠輔内野手(26)が、キャンプ地の沖縄・宜野座で日刊スポーツ評論家の桧山進次郎氏(51)と「虎の新旧4番リーダー対談」を行い、V奪回にかける覚悟を語った。チームリーダー論、4番論、打撃論に花を咲かせ、03年に選手会長として18年ぶりリーグ優勝に導いた桧山氏と「主将V」への思いをぶつけ合った。【取材・構成=佐井陽介、編集委員・高原寿夫】

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桧山 個人的なことを聞くと、去年結果を出して、今年は取り組み方を変えたりはしている?

大山 変えずにやっています。去年1年間やって良かったことを継続しつつ、もっとレベルアップする。変えることはできるけど、継続する難しさがある。変えるよりも続けることを大事にしています。

桧山 去年は最初(開幕直後)試合に出ていないよね? それだけじゃなくてレフトを守っていた。あの時の心境はどうだったの? オレが大山の立場だったら「ええ加減にせえよ、オレはサードやぞ」となっていたと思う。

大山 悔しい気持ちはありました。でも、試合に出ないことには打席に立てない。去年はマルテがいる中で「三塁1本で行きます」となったら、ただベンチにいるだけになってしまっていたかもしれない。もし外野で出られるチャンスがあるならそこで、と考えました。外野で結果を残せば、サードとしてまたチャンスが来ると思っていました。

桧山 なるほどね。それで(シーズン)途中から試合に出て…。それまではちょっと右方向に打球が飛びがちなところがあったけど、ガンガン振るようになった。あれは気持ち、考え方に変化があったの?

大山 開幕直後は試合に出ない分、試合前の練習時間が多くなって、バッティング回りの順番が来る前にも早出練習で室内で打ったりしていた。その時につかんだモノがあったんです。今までは気持ちよく打っている部分があったけど、あえて苦しく打つというか…。打った後も気持ちよく振るのじゃなくて、苦しく振る。そういう中で結構いい感触が出てきて、それを続けていこうと思いました。あとは、しっかり振ろうと思っていた。空振りOKぐらいの気持ちで振ることができた。それで長打も増えたのかなと思います。

桧山 一気にイメージ変わったもんね。「大山と言えばフルスイング」というイメージにみんなが途中から思いだした。初球からガンガン振るイメージがついてきた。

大山 最初、試合に出られない時に代打出場が多くなって、1球見逃すのももったいないという気持ちがあった。結果を出さないといけないのはもちろんなんですけど、1打席で3球しっかり振ろうという意識があった。そういう意識がプラスになったのかなと思います。

桧山 それで去年いい成績を残して、今年もう一段階ステップアップを目指す中で、その姿勢を変えずにいくのか、ちょっと変化をつけるのか、どうなるかな。大山が初球からフルスイングしてくるのはもう相手バッテリーの頭に入っている。それに対してどうしていこうと思っている?

大山 やっぱり去年の最初にあれだけ振って、終盤の方は(配球の)入り方も変わってきた。その中でも振ることは変わらないけど、配球だったり相手投手の特徴をもっと勉強しないといけないと思っています。でも、考えすぎて振れなくなるのが一番嫌なので。振っていく中で、この投手は初球は何が多いなとか、ゴロを打たせたいから低めの変化球かなとか、そういうことも考えることで変わってくる。場面場面での引き出しをもっと増やしていきたいと思っています。

桧山 今度はフルスイングする中で内容のある打席をもっと増やしていくんやね。初球を振るだけじゃなくて、ちょっと待って、自分が打ちたいボールを投げさせてそれをフルスイングするとか。そうなると多分もっと野球がおもしろくなる。駆け引きが出てくる。打席だったら相手はキャッチャー。そうなると人間関係が楽しくなってくると思うよ。

桧山 今はキャプテンという立場。今度は打席の駆け引きだけじゃなくて、選手同士の駆け引きも出てくる。それぞれみんな性格が違う。キャプテンの立場で、あいつはこういう性格だから今言った方がいいなとか、ちょっと様子を見た方がいいなとか、もっと苦しんだ方がいいな、まだ今は言わない方がいいなとか、今はみんなをまとめて言わないといけないなとか。そういう部分にも生きてくる。そうなると野球以外にも視野を向けられるようになって、人生がおもしろくなると思う。今、その入り口に入ったんやろうね。

大山 そうですね。でも、まだまだ全然分かっていないです(笑い)。

桧山 去年までは野球だけの楽しみだったのが、今年はそうなると思う。人間関係も楽しくなると思う。

大山 食事会場でも周りを見て、こういう性格なんだなと見たりはします。人は全然違うんだなと感じたりはしますね。

桧山 ということは、自分もどういう風に見られているのか気になる?

大山 気になりますね。周りがどういう風に見ているのかな気になりますし、今こういう態度をしたらどう見られるのかとかを考えるようになりました。周りを見るようになりました。

桧山 僕が気づいた時よりだいぶ早いね(笑い)。僕は31、32歳ぐらいでそうなった。早いね。今年はガンガン、チームを引っ張ってな。キャプテンの時に優勝してほしい。

大山 それが一番です。

桧山 それはキャプテンにしか味わえないから。僕らの時は選手会長しかいなかったけど、選手会長の時に優勝した時に本当にやって良かったと思ったから。

大山 本当にチャンスだと思います。頑張ります!

(おわり)

▼昨季の阪神大山は、初球のスイング率が3割4分4厘。19年の2割9分6厘と比べ積極性が目立つ。カウント別成績でも打率3割7分1厘、本塁打は最多の5本と好成績を残した。カウント0もしくは1ストライクでも19年よりスイング率は高く、若いカウントから打ちに行っていたことがわかる。

▼桧山の03年 選手会長3年目のこの年、桧山は開幕は5番で迎えたが、浜中が故障で離脱してから4番に入ることが増え、先発4番として59試合に出場(他に5、6番で46試合に先発)。守備位置は右翼を中心に一塁も守った。7月2日の中日戦では、史上58人目のサイクル安打も達成。シーズンでは111試合に出場し打率2割7分8厘、16本塁打、63打点でリーグ優勝に貢献した。なお、桧山は先発4番で通算301試合に出場、打率2割5分3厘、37本塁打、168打点の成績を残している。

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