最悪のコンディションでも非凡な適応力を見せた。日本ハムのドラフト1位伊藤大海投手(23=苫小牧駒大)が13日、紅白戦(名護)で初の実戦登板となる先発マウンドに上がり、打者2人を打ち取った。雨でぬかるむマウンドでも、多彩な工夫を凝らして最速149キロを計測。松本剛、平沼を相手に12球、わずか6分間で、デビュー戦は雨天ノーゲームとなったが、一級品の対応力が際立った。

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午後1時開始予定の紅白戦は雨で6分間、開始が遅れた。伊藤は「雨の日に試合がないことはない」と、第1球を投じるまでに対策を練って実行した。

注目の初球はクイックモーションに近いフォームで投じた。理由は「無駄を省いた」。本来はセットポジションから左足をしっかり上げて投げるが、この日は浅め。ぬかるむマウンドでもフォームを崩さない“引き出し”だった。

1番松本剛をカウント3-1から捕邪飛に打ち取ると、次はロジンバッグの交換を要求した。再び雨が強くなり、マウンド上に置かれていたロジンバックはびしょぬれ状態。流れのまま次の打者へ向かうことなく、冷静に決断した。マウンドから駆け降り、ホーム付近でボールボーイから新品のロジンバックを受け取ると右後ろのポケットにしまった。

2番平沼との対戦時は、どんどん雨が強さを増していった。カウント2-2からの6球目、雄たけびを上げながら投げた直球がボール。バッテリーを組んだ宇佐見からボールを返球されたが、すぐにボールの交換を要求。返球時に雨でぬれることも考慮して宇佐見の元に自ら向かい、手渡しでボールを受け取った。「ボールをなるべくぬらさないように心掛けました」と最善を尽くして二ゴロに。カバーに走ろうとした際、足を滑らせて転倒するほどのグラウンド状況で、直後の午後1時12分に試合はノーゲームとなった。

一連の立ち居振る舞い、悪条件の中でも球団のスピードガンで最速149キロを計測した姿に、栗山監督は「思った以上に滑る状況の中で、それをあまり感じさせないで投げられている。すばらしい」と対応力を高く評価した。伊藤は「まず今日はケガなく終われたので、それが一番です」と、ホッとした表情で振り返った。

次回登板は20日楽天戦(金武)の予定。相手ドラフト1位早川との投げ合いに注目が集まりそうだが、まずは過酷な状況下での適応能力をこの日、披露してみせた。【山崎純一】

▽日本ハム荒木投手コーチ(伊藤の実戦初マウンドに)「あの中で、あれだけ投げられているんだから、すごい。声を上げたり、形ではなくて打者に向かう姿は若い子たちが見習うところがある」

▽日本ハム宇佐見「独特というか、すごいなと思ったのが「最初からバッターボックスのライン際に構えて下さい」と。(初球から際どいコースを要求されることは)あまりない。マウンドの状態が悪かったので入りは荒れていたが、きれいな回転をしているし、力強い球は来ていた」

▽日本ハム松本剛「すごい投げづらかったと思いますし、その中でしっかりと、力強い真っすぐが来ていたかなと思います。投げっぷりもいい」

▽日本ハム平沼「足場は投げにくそうだったけど、うまくストライクを取っていて器用な投球だった。コントロールはいいのかなと感じたので、大崩れすることはないと思う。変化球も腕が振れているし、真っすぐは強い」