栄光への“かけ橋”が鮮やかに浮かび上がった。

巨人S班がキャンプ中の沖縄セルラースタジアム那覇。14日、全体練習開始前の午前9時、本紙江口和貴カメラマンが上空にレンズを構えた。豪雨の中、ほんの1時間ほど見せた青空に虹がかかった。「早出のトレーニング後に引き揚げてくる選手と絡めたかった。私の仕事は、虹だけ撮ってもしょうがない。今日は40歳の誕生日なんですが、もってないです…」と朝の1枚に納得しなかった。

この日だけ宮崎に1、2、3軍が集結したが、コロナ禍を考慮した4カ所での“隔離キャンプ”は最終日。15日に若手中心の1軍が那覇入りする。同時にベテラン、外国人が中心のS班も解体され「1軍」を結成する。元木ヘッドコーチは「ようやくチームが1つになる。いよいよという感じ。若手が(那覇に)来ても『さすがS班、さすが先輩』というのを見せてほしい」と期待した。

節目の誕生日を迎えた江口カメラマンの心境もシンクロする。「人生の折り返し。40代って、自分のことよりも後輩のことに意識がいく。明日から若手カメラマンが那覇に来る。自分も成長したいけど、後輩の成長につながる働き方をしたい」と待ち受ける。

2月1日。球春到来と同時に開幕に向けた鍛錬の時間を過ごしている。宮崎では桜井、高橋、横川ら若手先発投手陣は1000球を目標に投げ込んできた。S班も少人数を生かし、効率的に練習量を確保。元木ヘッドコーチは「時間が短いから練習が楽ということはない。待ち時間も少ないし、午後はそれぞれが考えてやりたい練習をやってきた。量を見たら結構、やっているし、きついと思うよ」と若手同様に鍛錬を積んできた。

開幕を心待ちするファンに、プロ野球史上初の無観客キャンプの熱を届けたい。江口カメラマンは「多いときで1日、1万枚を超える。好みはクスッと笑える、笑顔になれる写真。選手たちの人間性が伝えられるような写真がいい」。レギュラー争い、1軍生き残り、サバイバルが日に日に本格化する。元木ヘッドは「もう年齢の線引きはない。S班だから1軍、ということはない。ここからは全員がサバイバルになる」と宣言した。

移動日を挟み、16日から始まる1軍2次キャンプ地の那覇上空にかかった虹。宮崎の若手が鼻息荒く“かけ橋”を渡ってくる。【為田聡史】