「劇場」の準備が整った。楽天辰己涼介外野手(24)が推定135メートル弾でオープン戦を締めた。

2回1死、巨人今村のカーブを右翼席最上段へかっ飛ばし、手応え十分の“確信歩き”に見えたが…「どこ行ったんか分からんくて、とぼとぼしていました」。オープン戦打率は同僚島内に次ぐ12球団2位の3割8分5厘。「憧れているのはイチローさん、なりたいのは辰己です。去年の辰己は、今の辰己にはおらへんかなと思います」と“絶口調”だ。

理想のサクセスストーリーではなかった。抜群の身体能力を引っさげ18年ドラフト1位で入団。2年連続100試合以上に出場も、打率はともに2割2分台。神戸市出身の関西人らしく、ちゃめっ気たっぷりな面が際立つが「考えすぎる性格」ときちょうめんな一面が災い、壁を壊し切れない。石井一久GM兼監督からも「少し遊びを持ってほしい」と求められた。

アドリブではなく緻密に台本を組み立てた。オフはJFE西日本、駒大などを指導したトレーニングコーチの小山光久氏に師事し、体の使い方から理論的に打撃を解析。昨季の試合映像から全打球方向集、三振集に「一番打ちたくない」とする二ゴロ集などをまとめ、フォームの違いを愚直に洗って確実性を高めた。

自信が“遊び”に変わり、好循環につながる。「野球というのは元々遊びから始まったもの。遊びから仕事に、仕事は遊びに…。まあいろいろ考え方がございますが、いいあんばいでやっているつもり。そういった辰己をグラウンドで表現していきたいと思います」。バットも口も仕上がり万全で開幕を待つ。【桑原幹久】

▽楽天石井GM兼監督(辰己に) あんまり大きいのを打つと、彼はそういうモードになったりする。謙虚にいけば僕たちが望んでいるよりも上の成績を出せる。この1年、来る球に謙虚に対峙(たいじ)してほしい。

▽楽天渡辺佑(昨オフ横手投げに転向し、3月に支配下復帰。1回3奪三振無失点)「今日、勝負の試合だと思っていた。(開幕1軍に)もし選ばれたら頑張れるようにやっていきたい」

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