首位阪神が執念ドローに持ち込んだ。3点ビハインドを背負ったが、7回に熊谷の二盗など果敢な足攻めから同点。9回にも植田と中野が2盗塁を仕掛け、サヨナラ勝ちまであと一歩だった。中日戦はNPB初の通算2000試合目。矢野燿大監督(52)は自慢の機動力で古巣相手に意地を見せ、「うちの野球ができた」とナインをたたえた。

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走りまくった。矢野阪神が自慢の足で終盤に追いついた。指揮官が激しくタクトを振ったのは、1点を追う7回。2死走者なしから代打原口が遊撃内野安打で出塁すると、矢野監督はすぐさま代走熊谷をコールした。その熊谷が、続く近本の1球目に二盗に成功。近本の四球で2死一、二塁とすると、糸原の右前打でまた激走だ。スピードを緩めることなく三塁を蹴ると、捕手のタッチをかいくぐって本塁にヘッドスライディング。3点ビハインドから執念で同点に追いついた。

今季2度目のドローも矢野監督の声は決して暗くなかった。「同点で悔しいし、最後も中野がバントを決めてくれていたらとか反省はあるけど、全体的にはうちの野球はしっかりやれた引き分け。精いっぱいやってくれたかなと思います」。

9回には先頭梅野が左前打で出塁し、代走植田が二盗。続く中野が送りバント失敗もその後、果敢に二盗を決めた。一打サヨナラの夢を膨らませた。終盤の3盗塁でチームはこれでリーグトップの31盗塁。打撃だけではない。矢野野球の強さの秘密が詰まった攻撃だった。

不思議な縁だった。矢野監督がプロ人生をスタートさせた中日と、選手として花開いた阪神とのTD戦はこの日、通算2000試合を迎えた。矢野監督のプロ初出場、プロ初安打、さらにプロ初本塁打は実は阪神戦だった。97年オフに中日矢野、大豊、阪神関川、久慈の2対2交換トレードで阪神に移籍。それから24年後。虎の指揮官として節目の試合を迎えた。

「何千試合とか何百試合とかいろんな記録って、俺らだけでできることじゃもちろんない。OBの人たちが作ってきてくれた積み重ねがあっての2000。たまたまその縁があって、自分は両チームにいたんでね。そういう何かの縁は感じる。将来思い出すようなゲームになる」

2位巨人がDeNAに勝利したため、差は3ゲームに縮まった。勝利を手にすることはできなかったが、指揮官が掲げる積極走塁と諦めない姿勢を示した。節目のゲームにふさわしい戦いぶりだった。【桝井聡】。

▽阪神原口(7回2死から代打で3試合連続安打を放ち同点を演出) 出た場所で結果を出すことが今の仕事。出たところで結果出してチームに貢献できるように、いい準備を続けたい。

▽阪神熊谷(7回代走で初球に二盗を決め、糸原の適時打で同点の生還) なかなか走る機会がなかったので、僕の武器をしっかり出せたのでよかった。何とか前を見て、次の塁を狙えないかなと思っていたので、それがいい結果につながったかなと思います。

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