阪神の新外国人ラウル・アルカンタラ投手(28=韓国・斗山)が来日初登板で先発し、6回7安打5失点で初勝利をつかんだ。「アッアッー、オハヨウゴザイマス」。お立ち台での第一声はまさかの朝のあいさつ。冷静な投球とはかけ離れたおちゃめな姿で、ファンの心もがっちりつかんだ。

ヤマ場は4点リードの6回、先頭梶谷から4連打の猛反撃を受けた。いやなムードの中、一塁手マルテがマウンドに駆け寄った。「いいピッチングしているから、落ち着いていくこと。まずコントロールをしっかり下(低め)に投げること」。同郷の仲間に背中を押されると、スモークを捕邪飛。その後も内野ゴロと重盗で追い上げられたが、1点のリードを守り抜いた。

失点した2回と6回以外は3人ずつで片付け、最速153キロの球威と制球力が光った。「今日初めて勝つことができたのでとてもうれしい気持ちと、またこれからも頑張りたいという気持ち。95点をあげたい」。そんな自己採点に、矢野監督も「点数より内容の方が、良かったかなという感じに見えた」と合格点だ。

昨季韓国リーグでは最速158キロを計測し、20勝を挙げて最多勝に輝いた。それでも韓国球界関係者が舌を巻いたのは、その冷静さ。マウンドでカッとすることはなく、穏やかで周りを見渡す能力に優れていた。所属した斗山でフォークを習得すると「リーグのエース」と言われるまで進化。成長させてくれたチームへの思いも忘れず、退団が決まった昨年末は自身のSNSに感謝の長文を書き記した。穏やかで謙虚な人柄は日本でも愛されるはずだ。

夫人と3人の息子を米国に残して単身来日。この日も海を越えて応援してくれていた。「さみしい気持ちもあるけど、いい時も悪い時も家族が一番支えてくれる存在」。阪神の助っ人投手が来日初登板で巨人戦に先発して勝つのは02年ムーア以来、3人目。虎にまた頼もしい戦力が加わった。【磯綾乃】

◆ラウル・アルカンタラ 1992年12月4日生まれ、ドミニカ共和国バラホナ出身。16年9月にアスレチックスでメジャー初登板。メジャーでは通算13試合で2勝5敗、防御率7・19。19年から韓国球界で2年間プレーし、昨季は20勝で最多勝を獲得。150キロ超の速球とツーシーム、スライダーが武器。背番号44で推定年俸は2億1000万円。193センチ、100キロ。右投げ右打ち。

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