日本ハムの前半戦総括と後半戦の展望「野手編」は、日刊スポーツ評論家の森本稀哲氏(40)に語ってもらった。最下位からの巻き返しへ、中田翔内野手(32)ら主力の奮起と野球の質を上げることを求めた。

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【前半戦総括】

昨季まで主力と控えの差が少しあったチームだが、浅間や高浜らの“新戦力”が台頭したのはよかった。

高浜は19年オフに育成になって、やっと入団した時に必要だった気持ち、必死さを持てたと思う。それに気づくことができず、やめていく選手も多い。メンタルが変わり、パフォーマンスにつながっているのは王柏融も同じだ。昨季までは日本に来てレベルの差に面食らった部分もあって精神面から慌てていた。若い選手が結果だけを求めて自分の形を崩して2軍にいくという、よくある形だった。これまではバットに当てようとする意識が強すぎて右肩が開き、強く振れずに変化球は振らされる悪循環だった。今季は右肩の開きが少し我慢できることで真っすぐが強く打てるし、変化球も拾える。打席で慌てることなく、自分の形を崩さずに打撃ができている。

誤算は開幕から主力全員が調子を落とし、スタートダッシュに失敗したこと。中田、西川、大田、近藤は実績もあり、春季キャンプから調整も任されている部分が多い中で誰も開幕に合わせられなかった。1人1人の自覚が足りなかったと反省しなければいけない。

【後半戦展望】

主力の選手たちが、どれだけ危機感を持って、責任を感じて後半戦に臨めるかどうか。監督やコーチが試合をやるわけではない。選手が試合をし、選手がチームをつくるのです。その意識が出てこないと、他の一丸となっているチームに対して最下位のファイターズが巻き返していくことはできない。五輪ブレークもあり、後半戦が始まるまでは立て直す猶予もある。この時間を有効活用して、開幕時にできなかったスタートダッシュをできるようにしなければいけない。

今の戦力でも十分戦えると思っているが、数字に表れないプレーの質を上げることも大事になってくる。

例えば、1死一、三塁で遊ゴロ併殺打は失策と同じ。同じ場面で二ゴロなら1点を奪うことができる。逆に守備では、同じ場面できっちり併殺に仕留める。取れる時に点を取って防げる点は防ぐ。打ったら勝つ、打てなかったら負けるではなく、打てなくても勝つ。後半戦は、かつてチームが当たり前にできていた野球をできるようにならないといけない。リーグ戦中断期間は、あらためて勝つために必要なモノを考えないといけない時期。調整の位置付けなら、時間はもったいない。(日刊スポーツ評論家=森本稀哲)