「投げる哲学者」の異名を持つDeNA今永昇太投手(27)が、エースの振る舞いを見せた。

6回、先頭打者西川のゴロをルーキー牧秀悟がはじいて失策した。今永は「イレギュラーでバウンドがはねた。簡単なボールではない」と牧をかばいながらも、気合を入れ直した。139キロ直球で次打者の4番渡辺諒を遊ゴロ併殺に打ち取り、1球でピンチを脱した。高卒2年目の森敬斗から牧、一塁の伊藤裕季也へと流れるような併殺完成に、さかんに手をたたいて牧を鼓舞した。

今永は言った。「エラーした後の投球は、よりチームの士気を上げると思う。僕にとってはチャンスであると思っている」。耳を疑うような言葉を紡いだ。

どういう意味なのか。失策で先頭打者の出塁を許せば、ピンチではないのか。「そういったところを抑えることによって、誰かの失敗をただの失敗で終わらせたくない。結果的にゲッツーという最高の結果になりましたが、誰かのミスをカバーする」。今永はこれまで「ベンチを盛り上げたい」と何度も口にしている。3死目を取った攻守交代時に、全力疾走でベンチに戻ることもその一環だ。野手が落ち込みそうな失策という状況も、自分が次打者を抑えれば、意気消沈しないで済む。投手と野手でチームとしての一体感も生まれる。だからこそ「チャンス」という言葉につながるのだ。

中断期間で最後の登板は、6回84球、5安打4三振で2失点だった。2回に四球と長短打、左犠飛で2点を失ったが、あとは危なげなかった。「落ち球の精度というのは毎回課題としてテーマとして持っている。2回に落ち球の握りを微調整した。そこから角度のあるボールがいくようになった。自分の引き出しが増えた」。フォークボール、チェンジアップの握りを変え、3回以降は4イニングで散発3安打に封じた。

三浦大輔監督は後半戦で「中心になってもらわないと困る」と今永を評し、中7日でチームの公式戦開幕となる14日ヤクルト戦(新潟)の先発が有力となる。今永は「暑い時期にしっかり球数を投げられたのはよかった。いい1カ月になった」と調整に手応えを感じている。中断期間中は2軍も合わせて3試合で14回を投げた。万全の状態で後半戦に臨む。【斎藤直樹】