負ければ3位転落の一戦で、巨人原辰徳監督(63)の勝負勘が逆転勝利を生んだ。巨人は1点を追う7回1死二、三塁、中島宏之内野手(39)が右前打。原監督が直前に代走起用した二塁走者の広岡大志内野手(24)が好スタートで決勝点の生還を果たした。プロ初勝利を目指した直江大輔投手(21)を5回途中で降板させ小刻みな継投で逃げ切り。首位阪神を2ゲーム差のまま、追走する。

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寸分の迷いもなく、原監督がベンチから姿を見せた。1点を追う7回1死二、三塁、打者中島。逆転の二塁走者を大城から広岡に代えた。その直後。中島が初球を強振すると、打球はふわりと右前へ。広岡はこの回から守備固めで入った右翼手山崎が本塁送球をあきらめたほどの好スタートで悠々と決勝のホームを踏んだ。殊勲打の中島は「2人がかえってきてくれて良かった」と笑顔。原監督も広岡の好スタートに「そうですね」と2度うなずいた。

継投もさえ渡った。1点を追う5回に直江が無死一、二塁とすると田中豊にスイッチ。後続を抑え、傾きかけた流れを断った。以降も4投手が3試合連続2ケタ失点を許していた燕打線を眠らせ、指揮官の起用に無失点リレーで応えた。

迷いのない采配には理由がある。「1人1人が役割を持っている。『捨て駒』はいないということですよ。チームの一員」。春季キャンプから、時間を惜しまず選手に目を凝らしてきた。試合前練習でも、外野フェンス沿いを歩きながら投手陣に声を掛ける場面がある。全員の状態を見定めて適材適所を把握したうえで、ベンチから戦況を見詰める。そこで、数々見てきた勝利につながる“風景”に、躍動する選手がイメージとして浮かんでくる。「自分の風景を自分の中で持っていないといけない。風景がそこに入ったら『この風景だ、こうしよう』と。選手を代えることが目的ではない。試合を支配する、勝つことが目的なわけだから。それぞれの役割を持っている」。この試合も勝利へつながる“風景”に合うように信頼する選手を送り出し、約2カ月ぶりの3位転落の危機を阻止した。

それでも指揮官は「数少ないチャンスでね、大城と目立ちましたね、ナカジは。いいところで打ってくれました」とたたえ、投手陣もねぎらった。首位阪神とは2ゲーム差のまま。後半戦に掲げる「わっしょいベースボール」の主役はもちろん選手だが、担ぎ手を信頼と期待を下地に丁寧に配しているからこそ、巨人みこしは後退せず前に進んでいる。【浜本卓也】

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