ロッテがオリックスとの神戸決戦で首位を守り抜いた。1勝1敗1分け。7回に新加入の小窪哲也内野手(36)が、9回には荻野貴司外野手(35)がともにソロを放ち、執念でドローに持ち込んだ。同じ奈良出身で同い年。チームは違えど、プロ野球で長くセンターラインを経験してきた2人が味わいを深めて再会し、パ・リーグの主役の座を守り抜いていく。

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東経135度4分。日本標準時の子午線にほど近い神戸の丘で、“Mr.センターライン”の2人が負けを消した。ロッテがパ・リーグの中心を守った。

7回、小窪のスイングがチームに勇気を与えた。6回まで2安打に抑えられたオリックス田嶋の直球を、左翼席中段へ。2週間前は熊本の独立リーグで汗を流していた男が8月末にNPBに電撃復帰し、この日1軍昇格でいきなり「2番一塁」でスタメン。第3打席で結果を出した。「とにかく必死で目の前のことを。球、速かったですけどね」と笑った。

今年で36歳。1番を打つ荻野とは同じ奈良県出身で、プロ入り前から名を知る存在だ。「あまり味わう余裕はなかったですけど、一緒のチームで試合に出て、感慨深いものがありました」と話した。

そんな小窪のことを「てっちゃん」と呼ぶ荻野も、呼応するように最終回に8号同点ソロを放った。「ちょっと今日は足を引っ張っていたので」。必死に打った打球が風に乗り、左翼席最前列に落ちた。心なしかいつもより速く、笑顔でホームを駆け抜けた。

「勝てれば一番良かったですけど。次につながればいいと思います」。2番中堅の藤原の故障離脱は苦しいが、今のロッテは選択肢が1つじゃない。「誰かがカバーすれば。そこはみんなでカバーしたいなと思います」。ロッテひと筋で打って走って守って、はや12年目。チームの中核として、チーム全体を見守る。

派手に決めた2人だけではない。故障から復活した石川歩投手(33)が6回2失点と好投し、最後は守護神の益田直也投手(31)がしっかりとゼロに抑えた。49勝40敗16分け。藤原ら若手が目立つ今季、チームの精神的センターラインをなすベテラン勢の安定感も、首位をキープしていく上での大きな原動力だ。

井口資仁監督(46)も「若い選手と経験のあるベテランをうまく使いながら、なんとか最後までいければと思います」と、厚くなった選手層への手ごたえを口にする。それぞれの時間と経験を経て、1つになって戦う。子午線上の厳しい3戦を後退せぬまま終えた。47年もの間、刻まれていない歓喜の時へ。少しずつ針を進め、パ・リーグをつかさどる。【金子真仁】