広島床田寛樹投手(26)が2年ぶりの完投をプロ初の完封勝利で飾った。9回、今季最多125球を投げ、6安打9三振無失点で4勝目を手にした。

8回まで115球を投じながら、自ら9回のマウンドを志願して、巨人を相手に最後までゼロを並べた。左腕の快投で、チームの連敗を止めた。

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ピンチをチャンスに変えた。2点リードの9回、先発床田は味方のミスから無死一塁とした。あと1人でも走者を出していれば交代だった可能性もあった。だが、絶対的な守護神が控えているということをプラスに捉えた。中田、ハイネマンを1球で打ち取ると、続く小林には3球勝負。最後の力を振り絞り、125球目の真っすぐで空を切らせ、試合を締めくくった。

「全力で投げようと。小林さんも(バットに)当てられるの嫌だったので思い切りいこうと。最後だと思っていた。それが逆によかったのかな」

8回を終え、すでに球数は115球に達していた。ブルペンではすでに球団の新人最多セーブに王手をかけ、新人王争いをする栗林が準備を進めていた。だが、床田は真っすぐ佐々岡監督を見つめ「行きたいです」。続投を志願した。「多分(走者が)2人出ていたら代わっていた。栗林には申し訳ないですけど、回したとしても栗林なら大丈夫だろうと。(栗林の存在が)つながったこともありますよ」。新人守護神の存在が無形の力をくれた。

今季開幕ローテ入りしながら、5月末まで1勝2敗、防御率3・98で2軍降格となった。左の柱候補と期待されながら、2軍調整は2カ月に及んだ。その間、高橋昂や玉村という年下の左腕が台頭。横山投手コーチは「彼らの姿も刺激になったはず」と相乗効果を口にする。今季最多の球数を投げ切った左腕は「暑い時期に(2軍本拠地)由宇で焼かれているので。上がってきたときも、全然楽だと思いました」。日焼けした笑顔からも、2軍での日々が無駄ではなかったことを表していた。

栗林を温存してまで続投を許可した左腕が期待に応え、佐々岡監督も手放しでたたえた。「連戦中、移動試合。長いイニングを投げてくれて良かった。ずっとこういう投球を期待していた。初完封を自信にしてほしい」。再昇格後は4試合で3勝1敗と頼もしい。左腕は「残りの試合でも試合をつくり続けて、いいものを見せたい」と初完封だけでは満足していない。【前原淳】

◆床田寛樹(とこだ・ひろき)1995年(平7)3月1日生まれ、兵庫県出身。箕面学園3年夏は大阪府大会3回戦敗退。中部学院大を経て16年ドラフト3位で広島入団。1年目の17年7月に「左肘関節内側側副靱帯(じんたい)再建術・尺骨神経剥離術」の手術を受け、19年に1軍復帰。通算55試合17勝18敗、防御率3・53。今季推定年俸2700万円。181センチ、88キロ。左投げ左打ち。