阪神大山悠輔内野手(26)は打席に入る直前、冷静に状況を見極めた。3回2死。4点リードがあるとはいえ、目の前で3番マルテが中越えライナーを放ちながら、二塁を狙って憤死していた。

「あそこで3人で終わってしまうと、流れも変わってしまう。まずは塁に出ようという気持ちがあった」

左腕坂本の外攻めに時間をかけて対応。フルカウントからの6球目、外角チェンジアップを丁寧に振り抜くと、高々と上がった飛球は右翼席最前列に届いた。

「3人で終わらず、打点がついたというところは本当にいい結果だった」

フォア・ザ・チームを貫いた末の無欲に近い19号ソロ。この1点で先発青柳の負担をさらに軽くし、4連勝に笑みがこぼれた。

2日前の3日中日戦では最後の2打席に悔しさを残した。ともに走者を置いた場面で絶好調のマルテが歩かされ、直後に凡退していた。「今後、この悔しさをぶつけていってほしい」。矢野監督の願いを初回からバットに乗せた。

1点リードの1回1死二塁では左前適時打。8回にも中前打を決め、9月3日巨人戦以来の猛打賞だ。勝利を最優先する主将としての責任感、そして4番の意地を早速両立させた。

9月は23試合出場で打率3割1分3厘、3本塁打、14打点。10月はここまで4試合出場で打率4割、2本塁打、4打点。好調をキープしたまま、球団では04~09年の金本知憲以来となる2年連続20本塁打以上に王手をかけた。

すでにチーム内では佐藤輝、サンズ、マルテが20発をクリア。大山も続けば85年以来36年ぶりの「20発超カルテット」誕生となるが、もちろん主将に個人記録を意識するスキはない。

「(勝利は)チーム全員が頑張っている証拠。また一丸となって勝てるようにやっていきたい」

この日も首位ヤクルトとの1ゲーム差は縮まらなかった。1戦1戦にしびれる秋、持てる力を出し切るのみだ。【佐井陽介】

▼大山が19号本塁打を放ち、昨年の28本塁打に続き2年連続20発の大台に王手をかけた。阪神の選手では、金本知憲が04~09年に6年連続で記録して以来。右打者では今岡誠の04~05年の2年連続以来。球団最長は7年連続で、藤村富美男49~55年、田淵幸一72~78年の2人。

▼今季チームではすでに、佐藤輝23本、マルテ22本、サンズ20本と3人が20本塁打をクリア。ここに大山が加われば、日本一を達成した85年のバース54本、掛布雅之40本、岡田彰布35本、真弓明信34本以来、36年ぶりの20発カルテットが誕生する。