阪神、ロッテで活躍し、日刊スポーツ評論家に就任した鳥谷敬氏(40)が、虎の守備力向上へのポイントを提言するキャンプ前企画。最終回は「未来への挑戦」がテーマ。ゴールデングラブ賞5度の名手はかつての自分を「本当に下手くそだった」と振り返った上で「守備は誰でもうまくなれる」とエールを送った。【取材・構成=佐井陽介】

鳥谷敬氏初提言<1>【鳥谷敬】阪神ワースト失策に「数ではなく“致命的”減らせるか」

鳥谷敬氏初提言<2>【鳥谷敬】阪神守備力向上のカギは「エラーの傾向と“なぜ”の分析」

鳥谷氏は現役18年間でゴールデングラブを5度受賞している。それでもプロ入り当初の守備力を思い返すと「自分は本当に下手くそだった」と苦笑いし、若虎軍団にエールを送った。

鳥谷氏 守備は練習をすれば誰でもうまくなれる。打撃は誰でも打てるようになるとは限らないけど、守備は間違いなくうまくなれる。

鳥谷氏はプロ3年目の06年、21失策を犯している。一方で09年から14年までの6年間で5度の1ケタ失策も達成。成長曲線のポイントは向上心だったようだ。

鳥谷氏 たとえエラーを20個しても、それを将来10個、5個以内にするためのエラーに変えられるか。考え方によって、チャレンジの度合いが変わってくる。同じエラーでも、前に突っ込んだものと、待って待って慎重にいったものとでは、次のファインプレーにつながるかどうかという部分で質の違いが出てきますからね。

虎の遊撃後継者でもある中野は昨季リーグ最多の17失策。とはいえ、果敢に攻めた結果のミスも多かった。鳥谷氏はそんな積極性は必ず今後に生きると言う。

鳥谷氏 チャレンジせずにシーズン15失策をキープしても、うまい選手が現れたらポジションを取られるだけ。でも、チャレンジを続けて20失策してしまったとしても、積極的なミスから成長のヒントをつかんで7、8失策を10年続けられるようになれば、その選手の価値は上がる。自分の将来も考えて、チャレンジを続けてほしいと思います。

実は阪神守備陣にはすでに向上している数値もある。昨季の1試合平均0・601失策は直近4年間で最少。失点につながった失策の増減イメージを比較してみると、シーズンの全失点から全自責点(投手の責任とされる失点)を引いた数字は、20年の67から21年は47に大きく減少している。単純に考えれば、鳥谷氏が言う「致命的なエラー」の数はすでに改善傾向に入っているとも言える。

鳥谷氏 極端な話、エラーの数は同じぐらいでもいい。失策絡みの失点を減らせばいいんです。もし大事なところでエラーが出てしまっても、投手が抑えてくれたら問題ない。助けてもらったら、今度は四球という投手の“エラー”をファインプレーで消してあげればいい。それが「チーム」です。もしエラーが失点につながってしまったら、打って返せばいい。そんな考え方でいいような気がします。(この項おわり)

◆阪神選手別失策数

中野17

大山10

サンズ9

マルテ8

糸原7

梅野6

木浪5

佐藤輝4

山本3

秋山2

原口1

西勇1

二保1

陽川1

江越1

坂本1

青柳1

伊藤将1

小林1

ロハス1

馬場1

小幡1

近本1

エドワーズ1

ガンケル1