大魔神のフォークが、後輩投手に伝授された。日刊スポーツ評論家の佐々木主浩氏(54)が26日、DeNAの宜野湾キャンプを訪問。小谷正勝コーチングアドバイザーの発案で、伝家の宝刀フォークボールの高速カメラ撮影に応じ、決め球不足に悩んでいた上茶谷大河投手(25)に日米通算381セーブを挙げた秘伝のこつを伝えた。

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私の代名詞でもあるフォークボールには、投げるためにいくつかこつがある。「落とそう」と考えると、腕が振れなくなる。「落ちなかったら仕方ない」ぐらいでいい。抜くというよりは、たたきつけるという感覚だ。手首より先を振れば、勝手に抜ける。球を抜こうと意識すると、どうしてもボールを置きにいってしまう。3メートルほど先の地面にたたきつける練習を教えたが、ボールが抜ける指先の感覚を体で覚えるしかない。マウンド上で「ここはこうして」なんて考えていたら、投げられない。

上茶谷は当初「今からフォークを投げます」というフォームになっていた。球を抜こうとすると、どうしてもフォームが緩んでしまうのだ。真っすぐを投げる時の力が100%ならば、フォークは120%ぐらいで投げるのがこつだ。そうでないと、どうしても「落とそう」「抜こう」という意識になってしまう。

フォークは人さし指と中指で挟むのだが、実は小指の使い方が大事だ。ボールを挟む2本指だけより、同時に小指にも力を入れた方が挟む力が強くなる。ゴルフのグリップでも、小指に力を入れるとしっかりクラブが握れるはずだ。

ブルペンで見た上茶谷は腕を下げていたフォームを以前の形に戻し、真っすぐの威力が戻っていた。球質的に球速が145キロでも打者を差し込める。あれだけ力のある直球を投げられるのだから、フォークなどの決め球を覚えれば10勝できる力は十分にある。フルカウントから投げられるようになれば、フォークでご飯が食べられる。

これまでキャンプで頼まれて巨人の選手に教えたことはあったが、ベイスターズの後輩に投げ方を伝えたのは、05年に引退してから初めてだった。古巣に愛情はある。今年の活躍を期待したい。(日刊スポーツ評論家)

○…上茶谷が佐々木氏からのフォーク伝授を感謝した。「自分の財産になった。ストレートは球威、スピードともに今年はかなり感覚がいい。押せるからこそ、追い込んでからの決め球がほしかった」。学生時代から持ち球の1つにあったが、自信がなく、これまで優先度が低かったという。練習法や習得のこつを聞き「腕の振りが強くなった。真っすぐに近づいた」と実感していた。

○…小谷コーチングアドバイザーが発案した「OBの変化球特集映像」に3種類目が加わった。三浦監督のカットボール、斎藤コーチのスライダーに次いで、佐々木氏のフォークを「エッジャートロニック」という超高速カメラで1秒間に約700コマ撮影。手首や指の使い方や球の回転を収めた。小谷氏は「1球勝負できる球があれば飯が食える」という持論があり、レジェンドの技を現役選手に伝承する。