阪神V戦士で日刊スポーツ評論家の今岡真訪氏(47)と鳥谷敬氏(40)が25日の開幕を前に、矢野阪神の22年シーズンを占う第2弾は「打撃編」。大山悠輔内野手(27)と佐藤輝明外野手(23)が、主砲としてフル稼働することに大きな期待を寄せた。「投手編」の藤浪も含め、この3人がチームの命運を握ると指摘。他球団では生まれ変わった立浪中日に強い警戒感を示した。【寺尾博和編集委員、酒井俊作、佐井陽介】

  ◇  ◇  ◇

【特別対談】阪神Vカギは藤浪晋太郎 今岡氏「数字以上の存在感」鳥谷氏「年間通して投げれば」

今岡氏 昨年は佐藤輝と大山が試合に出なくなったあたりから、何か違うぞ、違うぞとなって最後はヤクルトにとらえられた。今年、佐藤が4番でも3番でもずっと試合に出て、結果的に3割30本塁打100打点を達成したとしても、トータルで考えたら全然打てない時期が必ずあると思う。その時期に何をしたかが、これから彼が背負っていく勉強にもなる。ダメな時に試合に出なかったら後に残らない。佐藤と大山は調子がいいときは自然と貢献しますよね。そうでない時に何をしたのか、そこを期待したい。2人には今年、試合に出続けて貢献してもらいたい。

鳥谷氏 4番を生かすも殺すも、その前後の打者だと思っています。3番が塁にいる状態で4番を迎えるのか、四球を出したら後ろに怖い打者が控えているのか。現状でいえば、マルテ選手と大山選手の2人が同時に調子を落とすと、佐藤選手だけをケアして四球でもいいかという攻めになります。この2人がうまく機能していくと、必然的に佐藤選手と勝負しないといけなくなる。勝負していくと甘い球も来る。佐藤選手の前後を打つ打者の方が、点を取っていく上で重要なポイントになるんじゃないかと思います。

今岡氏 打順は近本、マルテ、大山、佐藤以外はデータを参考にしながら、基本的に当てはめるんだろうと思います。ロハスも調子が悪かったら代えればいい。佐藤をどこに置く、大山をどこに置く、どういう仕事をさせるか。それは首脳陣のマネジメントで、そこに他の選手を当てはめていくという作業になるんでしょうね。

鳥谷氏 近本選手が出塁して盗塁すれば、無死二塁という形になります。糸原選手や中野選手が送って走者三塁になれば当然、内野は下がる。打者からすると、選択肢がかなり増える状態で打席に立てます。安打か四球から盗塁、右打ち、内野ゴロで1点…それで得点できる。走者二塁で安打を放って、足の速い走者がギリギリでかえってくる1点も、安打が1本も出ない形での1点も、同じ1点。そういう取り方をしていくのも大事だと思います。

今岡氏 とにかくチームは近本、大山、佐藤輝が中心で、あとはシーズンが進む中でデータなどを参考に、佐藤の調子が落ちてきたら、先ほどトリが言ったように、佐藤の前にちょっとボールを長く見られるトリみたいな打者を置こうかなとか、いろんな考え方になってきますよね。

鳥谷氏 今岡さんも言われましたが、佐藤選手にしろ大山選手にしろ、調子がいい時はいくらでも本塁打は出る。悪い時にどう走者を進めるか、どうアウトになるか、それが出続けるための価値になる。調子が悪ければ常に三振となると、チームとして機能していかないので、外すという選択肢が生まれてしまう。もちろん思い切っていくのも魅力の1つですが、走者二塁で追い込まれたら何とか右に打つとか、ショートゴロでもいいからボテボテにるとか。そういう形を取れると、使う側からすれば、調子が悪くても貢献度があるからそのまま使うとなる。そういう意味でも、佐藤選手はまだ2年目ですし、前後を打つ打者がカバーしてあげる必要がありますね。

今岡氏 開幕を迎えるにあたって、注目しているのは中日です。立浪監督は厳しいことを言わなくても、選手にはそれが自然に伝わる方です。それは立浪さんが現役時代から積み上げてきたオーラで、選手には口で言わなくても分からせているはずです。今季は本当はもっと力があるんだろうなという投手や野手が成績を残して、チームに貢献するような選手が出てくる気がします。

鳥谷氏 自分もめちゃくちゃ気になったのは中日です。立浪監督をなんとか胴上げしたい雰囲気を、スタッフの方からも感じたので。キャンプを見ても、想像していたより若手が伸び伸びしていて、練習したければ練習したらいいよ、それはやり過ぎだよとか、結構シンプルにやっていて雰囲気がめちゃくちゃ良かった。選手たちに縛られている感じが全然なかったんです。1、2年目の若い選手でも、実力があるかないか、はっきり野球を見られている。何年目でこういう活躍しているからとか、そういう目がない。厳しさと優しさじゃないですけど、そういうものが同居していて、いい雰囲気でした。

今岡氏 強いチームと勝てるチームは違うと思っています。ただ戦力を考えると巨人は豊富です。ヤクルトは奥川が中心の投手陣になりますが、抑えも含めて昨シーズンのように投手力で戦えるかどうかでしょうね。

鳥谷氏 巨人はメンバーがほぼ決まっている感じでした。あとは丸選手が年間を通して活躍すると打順も組みやすい。代打は中島選手もいますし、バランスはいいなと思います。ヤクルトは投手の枚数が不安で、ケガ人が出た時にどうなるかですね。中継ぎ陣の負担を減らすという意味では、奥川投手が中6日で投げていくこと、先発が長いイニングが投げること。奥川選手ら若い選手がポイントになると思います。

今岡氏 僕は阪神と中日のマッチレースを見たいですね。立浪監督になって間違いなくチームは変わると思います。阪神は佐藤がホームランを30本、40本打っても、あるいは10本にとどまっても、矢野監督は彼を4番に置いて勝つか負けるかしか考えていないと思います。矢野監督が考えているのは、佐藤を4番に置いてチームはどうなんだ、勝つのかということだけです。調子が悪い時に代えるという選択なのか、そうじゃないのか。あとは本人が毎日練習するかどうかだけです。佐藤が30本、40本打つかどうかは、あくまで後からついてくることです。

鳥谷氏 藤浪選手と佐藤選手の使い方、扱い方ですね。調子が悪い時にすぐ外すのか、今岡さんが言われたように前後の打者を使って復調させるのか。昨年はCSファーストステージの初戦、1年間主軸としてプレーした大山選手もサンズ選手もいなかった。今年は藤浪選手と佐藤選手の使い方、生かし方によって、年間の順位、今後の阪神にもある程度の影響が出てくるような気がします。(終わり)

 

◆昨季の大山と佐藤輝 開幕戦は4番大山、6番佐藤輝で出場。4月15日の広島戦では初のアベック弾もマークした。だが、大山は5月6日に背中の張りで登録抹消。1軍復帰後も7番降格やスタメン落ちなど状態が上がらず、前年から7本減の21本塁打にとどまった。佐藤輝は東京五輪期間前まで20本塁打を放ったが、公式戦再開後は球界野手最長の59打席連続無安打。本塁打も4本に終わり、失速V逸の象徴になった。

 

日刊スポーツ新聞社で開催した今岡氏と鳥谷氏の対談は、十分な感染症対策を行って実施しました。