勝利の瞬間をベンチで見届けた阪神青柳晃洋投手(28)は、両手でガッツポーズを決めた。今季初登板で8回7安打1失点。戻ってきた大黒柱が、連敗を6(1分け挟む)で止め、チームに待望の2勝目をもたらした。「すいません! 遅くなりました~! やっぱり最高ですね」。お立ち台で叫び、ファンと喜びを分かち合った。

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「重要な試合だと思っていた。遅れてしまって申し訳ない気持ちがあった。気持ちで投げて、流れを変える投球をしたい。ずっと『粘ったら勝てる』と思って投げてました」

時折霧雨が降り注ぐ甲子園で、魂を込めて95球を投げた。初回に1点を失うも、2回以降は踏ん張った。味方が逆転した直後の6回、1死一、二塁。先制打を含む2安打を許していた坂本を打席に迎えた。

「何かを変えなければいけないというところで、梅野さんと話し合いながら、3巡目で使おうと」

直前の円陣で作戦を練り直し、1ボールからの2球目、73球目で初めてカーブを選択。外角低めに決め、中飛に斬った。「梅野さんの考えだったり、会話があってこその配球だった」。要所を切り抜け、流れを渡さなかった。

開幕投手に指名されながら、開幕直前の新型コロナ感染でまさかの離脱。どん底に沈むチームの力になれない悔しさ、もどかしさを抱えながらも、できることに徹した。「他の投手も頑張っていましたし、手本になろうと思った」。昨季最多勝と最高勝率のタイトルを手にした右腕に、後輩からは質問攻めの応酬。トレーニングの方法や試合へ臨む準備など、技術、知識を惜しみなく伝えた。「今日は鳴尾浜の選手にも見といてくれと言っていたので、良いピッチングができたかな」と堂々と胸を張った。

最高の形で帰還を遂げた右腕に矢野監督は「素晴らしい。ずっとヤギらしく落ち着いて投げてくれた。ベンチに帰ってきてもずっと声を出してくれる。中身も、チームを引っ張っていこうという気持ちがあった最高の投球」とねぎらった。頼もしいエースが帰ってきた。【古財稜明】