巨人原辰徳監督(63)が“勝負手”で5連勝を呼び込んだ。同点の4回2死一、三塁、打者香月の初球に重盗を仕掛けて決勝点をもぎ取ると、その後に打線が活性化。6回には打者一巡の猛攻で中日柳を攻略し、両リーグ最速の貯金10に達した。原監督は「前にしか進まない」ことから「勝ち虫」と戦国武将に愛された「とんぼ」柄を愛用。この日は自身のプロデュースで、トンボの柄が入った球団公式グッズのネクタイの試作品を着用して名古屋入りした。前へ前へ-。攻めの姿勢で勝利を重ねる。

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試合が落ち着きだした4回。巨人が動いた。2死一、三塁、打者香月。初球、一塁走者ウォーカーがスタートを切った。三塁走者の丸は捕手木下の二塁送球を見るや、好判断で一気に前へとかじを切った。本塁に滑り込み、勝ち越しの生還を果たした。原監督は「たまたまですよ」と笑顔で話すにとどめたが、原政権16年目で11度目となる「重盗での本塁生還」の勝負刀を抜き、中日柳を攻略した。

攻めの姿勢は指揮官の身の回りにもあふれている。今季の移動時、「とんぼ」柄のマスクを着用することがある。とんぼは「勝ち虫」ともいわれ、戦国武将が好んでかぶとや着物の柄に用いた。「前に進む。縁起の良いって言われているしね」。開幕前日も「どういう逆風が吹こうが、とんぼのごとく前にしか進まないと」ととんぼに思いを託した。

開幕ダッシュを決めても、前しか見ない。名古屋入りしたこの日、原監督の首元にはとんぼの刺しゅうが入った水色のネクタイが巻かれていた。原監督がプロデュースし、球団公式グッズとして近日中に発売予定のネクタイで、完成したばかりの試作品だった。4連勝で貯金9と好調だが、身も心も首元も引き締めて臨んだ中日との首位攻防第1ラウンドで、とんぼのごとく攻めのタクトを見せた。

選手も果敢に追加点を奪いにいった。6回に打者一巡の猛攻で4点を奪い、昨季投手2冠の難敵を打ち崩した。好投手の投げ合いを完勝に持ち込み、両リーグ最速の貯金10。景気良い数字にも「いい攻撃だったと思いますね」と多くを語らず明日を見据えた。赤とんぼが舞う季節を実りの秋にすべく、このまま力強く飛んでいく。【浜本卓也】

 

◆とんぼと日本の歴史 とんぼは前にしか飛ばないことから縁起がいい「勝ち虫」として戦国武将に好まれた。勝ち戦を願って、兜(かぶと)のデザインなどに用いられた。時代を大きくさかのぼると、日本の国は古名で「蜻蛉島(あきつしま)」と呼ばれた。奈良時代に成立した歴史書「日本書紀」には、初代天皇とされる神武天皇が丘に登って国見をした際、国の形を蜻蛉(トンボ)が交尾する姿に見立てたという。