鷹のエースが鬼気迫る投球を見せたが、勝利をつかめなかった。ソフトバンク千賀滉大投手(29)が、初回にいきなり164キロを計測。これまでの自己最速だった161キロを一気に3キロも更新。日本ハム大谷(現エンゼルス)がマークした日本人最速記録165キロに迫った。

日本ハム松本剛への4球目。外角への直球が一塁側へのファウルとなったところで、162キロの場内表示が出た。さらに2死から、3番清宮がファウルにした、5球目の高め直球が164キロを表示。もはや大きなどよめきは起こらず、球場は異様な静寂に包まれた。

11日西武戦で、東浜がノーヒットノーラン。藤本監督は「俺らはどうもないけどさ、千賀がプレッシャーあるんじゃないの。でもそれに応じた投球をしてくれるんじゃないかなと思いますけどね」と、バトンを受けた右腕の心中を思いやりつつ、期待をかけていた。

自身も19年に達成している千賀は「ああいうのは運もある。詰まったのがポテンヒットになったり。運が重ならないとできないことなので」と冷静だった。チームとして2試合連続「ノーノー」なら球界初だったが、3回1死で宇佐見に左前打を許した。もちろん、表情を変えることはなく淡々と後続を断った。

4回には投球動作中にバランスを崩し転倒するアクシデントも。これでピンチを広げ、万波の中前打で先制を許した。19年以来の完封はお預けとなったが、5回を投げ終えた時点で通算1000投球回を達成。打線の援護がなく、8回4安打14奪三振1失点で今季初黒星。それでも今季初の2桁奪三振にも到達するなど、北の大地で強烈なインパクトを残した。【山本大地】