名前の海人(かいと)は与那国島に住んでいた祖父がカジキなどの漁師だったことで、「海人(うみんちゅ)」に由来する。

西武与座海人投手(26)は雨上がりの沖縄の風を感じながら、スイスイと投げ続けた。自己最長の8回を4安打無四球8奪三振無失点。浦添市出身のサブマリンは過去最高の投球を披露した。

8回2死一塁。カウント1-2からの117球目。握る白球に全身全霊を込めた。106キロカーブで、甲斐のバットに空を切らせた。これまでの最長は6回。7回終了時には豊田投手コーチに「行かせてください」と志願し、2イニング目に入った未知の領域も0を並べた。

「球場の雰囲気や声援、見えない力のおかげでいいピッチングができました。(東浜)巨さんとも投げられたのがプラスに働いた」。投げ合ったのは前回ノーヒットノーランを達成した沖縄尚学の先輩。意識はした。「絶対に先に降りない」との決意も実現させた。

登場曲は「島人(しまんちゅ)ぬ宝」(BEGIN)に。「ここで投げられる機会は1回あるかないか。みんな知っている曲がいいかな」と特別仕様に変更した。120キロ台後半が中心の速球に100キロそこそこのカーブを織り交ぜた。ストライク先行。変則派のお手本のような投球だった。

沖縄尚学時代は背番号1に縁はなかった。オーバースローで入学も同級生にかなわず、サイド転向。変則の道を歩んだ。岐阜経大ではさらに腕を下げ、膝下から浮き上がる球を模索。才能があるわけではないが、必死にプロへの道を切り開いた。9回に同じ沖縄出身の平良がまさかの5失点で白星には恵まれずも、招待した家族や島人のファンに堂々と立派になった姿を示した。【上田悠太】

▽西武辻監督(先発与座について)「素晴らしかった。本当に言うことなし。大きな自信になっていると思う」

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