近大が3季ぶり48回目の優勝を果たした。投打の歯車がかみ合い、阪神佐藤輝明内野手(23)が在籍した20年秋以来の頂点だ。プロ注目で最速151キロ左腕の久保玲司投手(4年=関大北陽)が5回を無失点に抑え、5勝&防御率1・78で最優秀選手&ベストナインに輝いた。今リーグで旋風を巻き起こした京大は勝てば同大学初の3位だったが、5位で全日程を終えた。

   ◇   ◇   ◇

勝てば優勝、負ければV逸…。天国と地獄の分かれ目で久保が本領発揮だ。3回無死三塁を力でねじ伏せにいく。愛沢祐亮捕手(4年=宇都宮)に真っ向勝負を挑み、142キロで空振り三振だ。直後にスクイズの失敗を誘って2死。再び空振り三振で窮地を脱した。

「気持ちを乗せて投げたかった。全国をかけた試合は初めて。とにかく緊張していました」

鮮やかな逆転Vだった。優勝目前の同大が立命大に連敗し、自力優勝の可能性が復活。大一番のマウンドを託された。「全然、寝つけなくて」。前夜は何度も寝返り。約4時間の睡眠でチームの命運をかけた一戦に挑んだ。3回のピンチを断つと続投を志願。最速151キロ左腕は複数球団のスカウトも見守る前で制球重視の投球に徹し、5回を2安打6奪三振で0封した。

172センチと小柄な久保はひと冬で3キロ増えて体重70キロへ。鍛える理由がある。1年のとき、佐藤輝と風呂場で一緒になった。「その体じゃアカンな」とダメ出しされた。先輩は親身だった。「サプリメントはいいぞと話していただいた。本当にスゴイ」。昨秋は左肩痛で離脱。プロで奮闘する憧れの先輩に負けじと、最終学年で意地を見せた。

3季ぶりの頂点に立ち、田中秀昌監督(65)も勝因を「久保と大石。投手陣が粘り強く投げてくれた」と分析した。リーグ最多48度目Vで王者復活だ。全日本大学選手権に駒を進め、6月6日に和歌山大(近畿学生)と対戦する。ベテラン監督は「関西の意地を見せたい」と意気盛んだった。【酒井俊作】