阪神が広島にサヨナラ負けし、開幕からこのカード1分けを挟んで9連敗となった。佐藤輝明内野手(23)は7回に同点打を放って、延長に持ち込み、10回には勝ち越しの二塁打。しかし、その裏にアルカンタラが同点ソロ、回をまたいだ11回にサヨナラソロを浴びた。3連敗で、首位ヤクルトと14・5ゲーム差。これは過去にあったプロ野球の逆転Vの最大差で、奇跡へのデッドラインといえる。

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佐藤輝は開口一番、「悔しいー!」と声を張り上げた。広島にサヨナラ負けし、その数分後の取材。球場外周で、帰りのバスを背に感情をぶつけた。歓喜の輪をまざまざと見せつけられ、我慢できるわけがなかった。

意地は見せた。3-3の延長10回無死一塁。右腕松本のフォークをすくい上げ、右中間を破った。「狙いを絞ってしっかり捉えることができた。いい当たりだったので、それは納得しています」。捕手会沢が構えたのは明らかなボールゾーン。3度も追い付いてきた接戦の中、技ありの適時二塁打で初のリードを奪った。

5回1死満塁では一ゴロ併殺崩れの間に三塁走者を生還させ、1点を追った7回2死三塁ではケムナから左前適時打。内角149キロに詰まってバットを砕かれたが、打球は遊撃小園の頭上を越えた。4番の仕事は長打だけではない。ここぞの勝負強さが光った。

5番大山が6月絶好調で、すでに月間10本塁打。「なんとか回したら、よりチャンス広がるのかなと。そういう意識は持っています」と4番にも好影響を与えている。左右の大砲コンビが相手にもたらす脅威は言うまでもない。大山は無安打だったが、前を打つ後輩がカバーしてみせた。

22日は母晶子さんの50歳の誕生日でもあった。愛情たっぷりの手料理で187センチのビッグサイズになるまで育ててくれた。昨年6月22日の中日戦(バンテリンドーム)でも大野雄から二塁打を放ち、勝利に貢献していた。グラウンドでの活躍が、母にとっても最高のプレゼントになるはずだ。

主砲の今季2度目の3打点も、広島には開幕から10戦勝ちなし。下位3チームが全て負けたため変わらず4位のままだが、首位ヤクルトには気付けば14・5差も離された。もう負けられない。本塁打で嫌なムードを払拭(ふっしょく)したいかと問われると「打ちます」と宣言し、帰りのバスに乗り込んだ。【中野椋】

○…3番近本が自己最長をさらに更新する19試合連続ヒットを記録した。1点を追う3回2死一、二塁で、広島遠藤の外角直球を中前へはじき返すタイムリー。5回1死一、二塁でも右前打、延長10回には先頭で左前打で出塁した。今季7度目の猛打賞にも、試合後は「勝つことだけなんで。そのためにやるだけなんで」と笑顔はなかった。

○…セットアッパーの湯浅がリベンジの熱投だ。同点の8回に登板。難なく2死にこぎ着け、代打持丸をフォークで空振り三振に仕留めた。「前回登板で失点を許してしまっていた。今日は絶対に抑えてやるという強い気持ちでマウンドに上がりました。3人で抑えられてよかった」。前回19日DeNA戦(甲子園)は3安打を集中されて3失点。汚名返上のマウンドになった。

○…加治屋は渾身(こんしん)の2者連続奪三振で沸かせた。同点の9回1死二塁で6番手でマウンドへ。3番菊池涼、4番マクブルームをともにフォークで空振り三振に仕留めた。「しびれる場面での登板で、しっかりと自分の仕事ができたと思います。攻撃につながるような投球ができたのではないかと思います」と納得した。

▼阪神が敗れ、ヤクルトが勝ったため、阪神と首位ヤクルトの差は今季最大の14・5ゲーム差に開いた。セ・リーグでは08年巨人が7月に阪神につけられた13差逆転Vが最大差で、プロ野球では63年の西鉄が7月に南海につけられた14・5差をひっくり返したのが最大差逆転V。阪神はそのデッドラインに並んだことになる。

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