これぞ一丸野球。広島野間峻祥外野手(29)が7回に決勝打を放ち、コロナ禍のチームに勝利をもたらした。試合前にマクブルームと堂林の新型コロナウイルスの陽性判定が発表された。23日先発予定の森下をベンチ入りさせても上限の25人に満たない中で、広島らしいつなぎの野球で劣勢を跳ね返した。連敗を阻止して、22日から前半戦最後のヤクルト3連戦(神宮)に挑む。

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まるでサヨナラ打を打ったかのように、野間は一塁ベンチへ右腕を突き出した。劣勢の展開で相手のミスに乗じて2点差を追いついた7回。なお2死一、三塁で野手主将は追い込まれながら阪神3番手浜地のカットボールを引っ張った。打球が一、二塁間を抜け、三塁走者が生還。この日初めてリードを奪う一打が試合の流れだけでなく、チームの重い、重い空気をも振り払った。

「ベンチ入りの野手が少ない中で何とか戦っていかないといけないので、出た選手がどれだけ仕事をするかが大事になる。そういったところで打てたことは良かった。同点にしてくれたので、いい流れに乗せてもらいました」

まさに全員野球で勝ち取った。先発アンダーソンが5回3失点で降板した6回からは松本、薮田が無失点でつないだ。2点を追う7回は先頭坂倉が左前打で先発西勇をマウンドから降ろし、3番手浜地から連打で1点差とした。続く磯村の中飛を近本が落球し、代打羽月の二遊間の当たりも好捕されながら併殺は免れて同点とした。単打と相手のミスでつないだ攻撃を野手主将が結実させた。

コロナ陽性者が相次ぐチームはこの日、4番マクブルーム、17日巨人戦で代打満塁弾の堂林が陽性判定を受けた。2軍選手18人が陽性を受けた16日以降、育成選手を含めた選手32人、スタッフ11人の計43人が陽性となる事態。23日ヤクルト戦先発濃厚の森下がベンチ入り。出場に備えてか、試合前のフリー打撃時には左翼で打球捕にも参加していた。

危機的状況を広島らしい一丸野球で切り抜けた。今後も全員陰性が続く限り、PCR検査を続ける予定。完全に乗り越えたわけではない。野間は「みんな、厳しい状況というのは分かっていると思う。しんどいですけど、よりみんなで戦っていかないといけない。それはみんな、分かっていると思います」と表情を引き締めた。連敗を阻止する粘り腰。22日から前半戦最後の3連戦、今季苦手とする首位ヤクルトにも示したい。【前原淳】

 

▽広島佐々岡監督(チーム一丸での逆転勝利に)「みんなで危機を乗り越えていかないといけない。1人1人が自覚を持ってやっていると思うし、今日は人数が少ない中でもベンチ(スタートの選手)、若い選手も、みんなともに戦っていた。ベンチでよく声が出ているし、いい雰囲気の中だからこそ、ああいう逆転劇が起こるんだと思います」

▽広島坂倉(プロ初4番でマルチ)「4番でも5番でも同じ感じでは入っています。(7回)先頭で出られたので良かったです。試合は続くので、勝てるようにみんなでやりたいなと思います。」

▽広島薮田(7回を3者凡退に抑えて2年ぶり勝利)「お久しぶりですという感じです。負けていた展開で行くことが多かったけど、今日は勝ちにつなげられたことがうれしいです」