これぞ4番だ。阪神佐藤輝明内野手(23)が先制決勝の犠飛でチームの窮地を救った。大山悠輔内野手(27)と北條史也内野手(28)が5日に新型コロナの陽性判定を受けて離脱。戦力ダウンの一大事に陥ったが、初回の大瀬良撃ちでチームに勇気を与えた。苦手広島に競り勝ち、貯金は再び最多タイの3。大山らの復帰まで苦しい戦いが続きそうだが、主砲が猛打で首位ヤクルト猛追を引っ張る。

   ◇   ◇   ◇

佐藤輝は外角低めのフォークを、バットを投げ出すようにすくい上げた。初回1死一、三塁。大瀬良をとらえ、左翼に先制犠飛を運んだ。「追い込まれていたので、何とか食らいついて、外野まで運びたかった。そこまで飛距離が出た打球ではなかったけど、島田さんがよく走ってくれた。ありがとうなぎ」。ほぼ定位置への飛球だったが、快足を飛ばして生還した三塁走者島田の愛称「うなぎ」をもじって感謝。これが決勝点となった。

この日、大山と北條が新型コロナの陽性判定を受けて戦線離脱した。中でも、チーム最多の22本塁打&71打点を稼ぐ5番大山を欠くことは大きな痛手で、チームは窮地に陥った。しかも前日4日の巨人戦は今季18度目の完封負け。だが、4番が意地を見せた初回の3戦ぶり57打点目が全ての重いムードを切り裂き、勝利への流れを引き寄せた。

盟友の不在は、自分がカバーする。大山について「野球に対する姿勢、簡単にマネできることじゃない。見習っていきたい」と話し、いつもお手本にしてきた。「後ろにいい打者がいたら、僕とストライクゾーンで勝負してくれる。それは大きい」。自身の打撃に大山の支えがあると感謝。背番号3が不在となった今、その無念も感じてのアットバットだったに違いない。

矢野監督は「輝にやってもらわなあかんけど、だからどうってことはない」と、この日のように4番の仕事をまっとうすることを期待した。負ければ今季の負け越しが決まった苦手広島に勝利し、貯金は再び今季最多タイの3。首位ヤクルトが敗れ、9・5ゲーム差に一歩前進した。

残り42試合で奇跡の大逆転Vを狙うが、コロナ第7波が阪神にも襲いかかってきた。8月は毎週6連戦の過密日程で、この先も厳しい戦いが予想される。「オレらはいるメンバーでどれだけ粘れるか。何が起こるか分からない。チームで力を合わせるしかない」。首位ヤクルト猛追へ、佐藤輝への期待はますます高まる。いきなり試練が訪れた長期ロード。4番の猛打に乞うご期待だ。【石橋隆雄】

○…木浪が4月13日の中日戦(バンテリンドーム)以来、約4カ月ぶりに代打で途中出場した。7回2死から岩貞の代打で出場。広島松本に6球目のフォークで二ゴロに仕留められた。試合前に「ここまで来たので、あとは自分の持っている力を出せるように準備してやりたい」と話していた通り、少ないチャンスでアピールを続ける。

○…7月中旬に新型コロナに感染した坂本が、1軍に復帰した。7月29日の2軍広島戦で実戦復帰し、4試合に出場して合流。球団を通じ「自分がいない間でも、みんなで結束して戦ってきた結果が今のチーム状況なので、少しでもそこの足しになれるよう、どんな形でもチームに貢献していければと思います」と引き締めた。この日の出番はなかった。

○…島田が初回に先制のホームを踏んだ。1死から左前安打。続く近本の右安で三塁に進み、佐藤輝の左翼への犠飛で生還した。「自分の役割は果たすことができた。1番が塁に出なかったら自分が1番打者だと思っている」と話した。7月は月間打率1割台と苦しんだが8月は4試合で打率3割5分3厘(17打数6安打)と当たりが戻ってきている。

○…西勇が西勇は5回1/3を6安打2失点で8勝目を挙げた。3回まで二塁を踏ませず、失点は4回のみと接戦で粘った。6回1死でマクブルームに左前打を許したところで降板し、「緊迫した試合の中で、走者を残してマウンドを降りる形になってしまったので、踏ん張ってくれた(岩貞)サダに感謝です」と振り返った。

◆今季の阪神新型コロナウイルス感染者 初の開幕投手に決まっていた青柳は3月17日に陽性判定を受け、大役を断念した。シーズン初登板は4月15日にずれ込んだ。代わりに開幕投手を務めた藤浪も、4月13日に陽性判定を受けて戦列を離れた。2軍では同月29日に復帰後初登板。6日の広島戦で先発復帰する。2軍でも平田2軍監督が7月29日に感染するなど、陽性者が相次いだ。1軍は7月26日の山本、今月3日の渡辺に続き、大山、北條と離脱者が再び出始めた。

【関連記事】阪神ニュース一覧