巨人直江大輔投手(22)が、4年目でようやくプロ初勝利をつかんだ。前回登板の6日ヤクルト戦(神宮)での危険球退場から切り替え、躍動感のある投球で6回3安打無失点と好投した。

20年10月に腰椎間板ヘルニアの手術を受け、育成契約も経験。松商学園(長野)のエースの先輩でもある父晃さん(54)にも支えられながら苦闘の日々を克服。巡ってきた8度目の先発チャンスをものにし、プロ野球タイ記録となる1シーズン7人目の初勝利投手となった。巨人は3位タイに浮上し、7月15日以来のAクラス入りを果たした。

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2年前。徳島県内の病室で直江の目には涙がにじんだ。腰のヘルニアで人生初の手術。注射を打っても、これ以上投げるのは限界だった。「大きいケガはしたがことなかった。正直どうなっちゃうのかな」。神経に近い繊細な箇所の手術に不安に駆られた。お見舞いに来た父晃さんに「プロ野球選手じゃない人生もある。サラリーマンで長野に戻ってきてもいい。でももう1度、東京ドームのマウンドに立って、もうひと花咲かせよう」と言われた。温かい言葉がしみた。

昨季から背番号を「054」に変更して、徐々に体を戻していったが、復帰1年目は違和感がついて回った。「2軍でも勝てるのかなって思ってました。ごまかしながら、迷いながら」と手術前とのギャップに悩んだ。6月に支配下再契約は勝ち取ったが、1軍では4試合未勝利が続いた。

もうプロ4年目。期待枠のままではいられない。1軍での結果にこだわり、リリーフとして初の開幕1軍も、6試合の登板のみで前半戦は5月以降出番なし。2軍戦では2四球を挟んで7連打を浴びたことも。「ここ最近、何をやってもうまくいかない」と嘆くしかなかった。

それでも下を向かず、腐らずに自分と戦った。危険球退場となった前回登板の記憶にも臆せず、この日のプレーボール初球、内角へ147キロ直球を突き刺した。頭をクリアにして打者との勝負に集中。6回0封でやっとウイニングボールを手にした。

「何度も失敗して、やっと1つ上に行けたかな。他の人の支えがあってこられた」と感謝した。同期の戸郷が今季10勝目をマークする中、ようやくたどり着いたプロ初勝利。「僕は1勝するのに4年かかった。まだこれから自分の能力を高めて、差を埋めていきたい。ここからがスタートだと思うので、もっと勝ちを増やせるように頑張っていきます」。病室で流した涙はお立ち台にはない。無数のフラッシュと喜ぶファンが、まぶしかった。【小早川宗一郎】

▽巨人原監督(直江について)「ボールも走っていましたし制球力も非常に良かったし、いいきっかけになってくれるとね。うちの若い投手の、期待の1人ですから。力をつけてきているのは事実だと思いますね」

▽巨人桑田投手チーフコーチ(初勝利を挙げた直江に)「これからも油断せずにコントロールを磨いて、1つでも多く勝って、長くプロでプレーしてほしい。(次回登板は)1度抹消しようと思っている。マメは1日、2日じゃ治らないので、しっかりと治してから登板させたいなと思っている」

▽巨人直江の父晃さん(東京ドームで生観戦し)「長野の田舎から出てきて、東京ドームで投げること自体すごいこと。たった1勝ですけど、わが家にとってはとてつもなく大きな勝利です。息子にはありがとうと言いたい」

◆直江大輔(なおえ・だいすけ)2000年(平12)6月20日生まれ、長野市出身。松商学園では1年秋からベンチ入りし、2年夏に甲子園出場。18年ドラフト3位で巨人入団。20年8月23日広島戦でプロ初登板。同年10月にヘルニア手術を受け、オフに育成契約。21年6月に支配下復帰し、7月1日広島戦で初セーブ。今季推定年俸760万円。185センチ、87キロ。右投げ右打ち。

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