雨上がりの戦いに京大野球部の本気が表れていた。関西学生野球秋季リーグ開幕の9月3日。同大に0-2の劣勢で、4回裏の攻撃中、豪雨で2時間以上も中断した。間延びしてもおかしくない。だが、再開後、鮮やかな好守連発で、引き締まった心を見せた。

近田怜王監督(32)も深くうなずく。「1点を守りきるのを意識して春からやってきた。愛沢のセカンドスローも春はほとんど刺せていなかった。守りの面は評価できるプレーがいっぱい出た」。愛沢祐亮捕手(4年=宇都宮)が6回、鋭い送球で二盗阻止。8回も完璧なスローで刺した。9回は左翼の中井壮樹外野手(1年=長田)がバックホームで追加点を阻んだ。

京大史上最多タイの5勝で躍進した春からの上積みを予感させた。万年最下位だった弱さは消えた。実は昨秋、選手の成長を後押しするシステムを構築した。「京大ベースボール」は、同大学のスポーツ紙の先駆けとして、学生記者団を結成したものだ。さすが秀才集団である。我々、野球記者顔負けの分析記事をホームページに載せるなど、充実している。仕掛け人は、同部コーチで京大大学院農学研究科の脇悠大さんだ。

京大の野球を世に知ってもらう。これも目的の1つだろう。だが、メディアの立ち上げには、別の理由もあった。元選手で主将だった脇さんは実感を込める。

「試合に勝っても誰かが取材に来るのがなかなかなかった。試合に勝とうが、あまり注目されていない。そういう気持ちがあった。注目される側になると、練習も試合も、見られていると自覚も出る。ヘタなことをできない。精神的なことも多いんです」

閑古鳥では、組織はよどんでいく。記事に書かれて好プレーを評価されれば、自信につながる。三塁コーチとしてグラウンドに立ち続ける脇さんは強調する。

「僕が1回生で入学したころ、相手投手の全球種を打てない状態だった。打てる確率がそもそも低く、下位打線は手も足も出なかった。野手では打てる選手が増えてきましたよね」

この日の同大戦。下位の選手も安打を連ね、140キロ台後半の高橋佑輔投手(4年=豊田西)から7安打を重ねた。堅守で3回以降は失点しなかったが、勝機を引き寄せられなかった。開幕節は同大に連敗したが見られていることを力に変えていく。負けても、負けても、工夫して、前に向かう。京大ナインの秋の陣に注目したい。