無名の侍が、異国で代表に選出された。BC・茨城の福田夏央(なお)投手(23)がWBCのニュージーランド代表に選ばれた。180センチ、90キロの最速148キロ右腕は「いろいろな国の代表選手と戦える。めちゃくちゃワクワクしています」と胸を高鳴らせた。

福岡生まれで、両親は日本人。中学2年で家族とニュージーランドに移住した。永住権を所持しており、今回の代表入りにつながった。当時は「(両親に)ついて行くしか選択肢がなかった」と困惑した移住が、大舞台に導いてくれた。

ニュージーランドのスポーツといえばラグビー。中学ではそのラグビーに打ち込んだ。進学した高校にも野球部がなかったため、地域のクラブチームに入った。40歳近くの大人もいる中でのプレーは「遊びのような感じでした」。球速は130キロ台前半。卒業後は本気で野球に打ち込むべく、米国の短期大学へ進んだ。

ここで成長を遂げた。最速は145キロまで上がり、現在の生命線という「シンカーのように外に逃げるチェンジアップ」を習得した。そのまま米4年制大学に編入する選択肢もあったが、コロナ禍が直撃。ニュージーランドに戻ったところ、同国で代表コーチ経験を持つ元ロッテの清水直行氏(46)と出会った。この縁で、清水氏が監督を務めていた沖縄のプロ野球チーム琉球ブルーオーシャンズに入団。日本を主戦場にすることを決めた。

今年からBC・茨城に移籍し先発、中継ぎで計23試合に登板。7勝を挙げ、初の地区優勝に貢献した。WBCではニュージーランドを初の本大会出場に導き、それをステップにNPB入りを思い描く。「海外のスカウトなどいろんな人が投球を見てくれる。頑張りたい気持ちでいっぱいです」。予選は30日からパナマでスタート。第2の故郷のために、南十字星が描かれたユニホームで腕を振る。