「高津流マネジメント」&「人心掌握術」!! ヤクルト高津臣吾監督(53)が、細心の選手管理と言葉の力で「チームスワローズ」をまとめ、恩師の野村克也元監督以来となる29年ぶりのリーグ連覇を達成した。投打ともに柔軟性のある起用と、適度な休養で故障を未然に防ぎ、選手のパフォーマンスを維持。節目のミーティングでは、昨年同様に心に響く言葉と話術でチームを鼓舞した。

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本拠地神宮のファンの前で7回、宙に舞った。高津監督は、場内インタビューで「みなさんと一緒くらいうれしいです。ちょっと気持ちの整理がついてないですけど…。チームみんなを信頼してやってきた。ファンのみなさんと一緒にチームスワローズとしてあげた大きな1勝なんじゃないかと思ってます」と、満員のファンに感謝した。

独特なゲキから連覇への幕が上がった。3月25日、開幕戦直前の全体ミーティングで「僕は自信がありません。でも、君らがやる自信は持っている。君らは絶対、出来ると思う。君らはやる男。できる集団だと思っている」と宣言。選手の自信を後押しした。

開幕直前に正捕手中村が故障。先発の軸として期待した奥川も3月29日巨人戦で緊急降板し離脱。5番サンタナも4月6日中日戦で負傷。主力を序盤で欠く想定外はあったが、選手に無理をさせない「高津流マネジメント」を継続。交流戦では4年ぶりの優勝を完全制覇で飾り、場内インタビューで「リリーフみんながMVPだと思っています」と中継ぎ陣を称賛。リーグ戦再開の6月17日広島戦前は「覚悟を持ってグラウンドに立ってください。体の大きい人、小さい人いるけど、プレーだけは小さくならないように」と奮起を求めた。

7月にはコロナに感染。「しんどかった」日々の中でも「せっかく離れてスワローズの野球が見られることを、プラスに変えていかなきゃ」と前を向いた。後半戦開幕の7月29日には「疲れたときは遠慮しないで言ってください。配慮が出来る範囲でやっていきたい。心と体を充実させて気分よくグラウンドに立てるように」。疲労に極力配慮する方針は変わらなかった。

神宮での優勝。監督就任1年目の20年のキャンプ中に亡くなった恩師の野村さんには「今年も元気に頑張りました。勝ちましたと伝えたいですね」と言う。選手だった当時から約30年。立場を変えての頂点に「受け継いできたのは、のびのびプレーすること、勉強すること。アップデートしていくことは、一歩先を行くこと。今の野球より、もう一歩先を考えながら進んでいくこと」とうなずいた。

「野村イズム」を継続し、ブラッシュアップし続けてつかんだ頂点に「気分もいいですし。今日はゆっくり寝られそうです」と笑顔。「高津流」が王道となった。【鈴木正章】

○…高津監督が昨季発した「絶対大丈夫」は特に注目されたが、今季も耳に残るフレーズが多数あった。5月4日阪神戦では白星を挙げた42歳石川と19歳内山壮のバッテリーを「親子キャッチボール」と表現。同21日DeNA戦では34歳川端を6番で2年ぶりに先発起用。7番内山壮、8番の20歳長岡と合わせ「川端から6、7、8と『ヤングスワローズ』」と笑った。試合後の取材は常に冷静沈着だが、8月2日に村上が5打席連続本塁打を放った際は「俺ね、対戦したいと思ったもん」と元守護神の血が騒いだ様子。予想結果を問うと「セカンドゴロだよ。ツーバウンドで」と自信満々に返答し笑いを誘った。

○…田口麗斗投手が歓喜に沸く本拠地を盛り上げた。優勝セレモニーが一段落すると、ひとりマウンド付近に立って両手を広げ、スタンドに拍手を要求。最高潮になったところで、ひと呼吸置いて「パン、パパパン!」と手拍子を合わせた。普段は勝利時にブルペン付近で行っている恒例のパフォーマンス。ムードメーカーとしては「優勝を目指してぎりぎりの戦いをやってきた」と胸を張った。

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