セ・パの関西2球団が、CSファイナルステージ初戦で明暗を分けた。オリックスはソフトバンク戦に快勝。先発山本由伸投手(24)が8回を5安打10奪三振、無失点の快投で、ポストシーズン18連勝中だった鷹打線を圧倒した。日本シリーズ出場をかけたプレーオフとCSで、2勝0敗チームの突破率は96%を誇り、最高のスタートだ。一方、阪神はリーグ王者ヤクルトに完敗し、黒星発進となった。

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一瞬、息を止めた。静寂の中で起こる拍手に、山本は大きくうなずいた。

「ほんとに1個ずつ。自分の中で切り替えて良い球を投げられました」

5回2死二、三塁。甲斐をカウント1-2に追い込むと、エースはマウンドを外した。スタジアムは温かい手拍子で背中を押す。時を止めた直後の71球目。149キロフォークで空振り三振を奪い、大きくほえた。

最大のヤマ場だった。先頭から連打を浴び、無死一、二塁から今宮のバントを珍しくお手玉。「サード(封殺)行けると思っていた。ちょっとダメでしたね…」。瞬時の反省で切り替えた。柳町、甲斐を連続三振に仕留め、勝機をグッとたぐり寄せた。

8回無失点の好投で、ソフトバンクのポストシーズン連勝記録を18で止めた。球数116球で無四球。10三振を奪う快投で「1アドバンテージ1ヨシノブ」に成功。あと2勝で日本シリーズへの道が開かれる。

大舞台を心から楽しむ。野球人という職業と真摯(しんし)に向き合い「イライラする意味がわからない。(練習を)やってない自分が悪い」とストイックな一面を見せる。そんな24歳には、唯一の悩みがある。「眠りが浅くて…。改善しないと」。深い睡眠が取れず、夢にうなされる。温厚で無邪気な笑みを浮かべるエースは「夢の中で怒っていることが多々あります。すごくスッキリして起きる。悪夢は良い夢って言いません? 夢占いに書いてました」とほおを緩める。

中嶋監督は山本の好投に「いつも通り」と絶大なる信頼を置く。8回での降板は「完封したら、何かもらえるの? 短期決戦だからって特別なことをやって空回りするなら普段通りの方がいい」との姿勢。初戦を白星で飾ったが「アドバンテージのことは考えていない。その試合をしっかり取りにいきたい」と指揮官は先勝にも慢心はない。

エースはお立ち台で宣言する。「あとは、もう…。思い切って2勝をつかみたいと思います!」。13日に勝てば2年連続日本シリーズ進出に王手。昨季同様、一気に決める。【真柴健】

○…先制点を含む押し出し四球を3度もらう、めずらしい攻撃になった。序盤は重い展開だったが4回に1死満塁から杉本が見極め、5回は2死満塁から頓宮、西野が連続でボールを選んだ。中嶋監督は試合前に、自軍投手陣に対して「無駄な四球」を厳禁としていた。自滅を誘っての快勝に中嶋監督は「どんな形であれ先制して、それをしっかり守り抜くのは勝つ条件」とうなずいた。

○…先発出場した杉本が2安打で完全復活を告げた。ともに右方向におっつけた技あり打。4回には先制の押し出し四球も選び、5回の2本目は適時打。今季は不調に加え、夏場にコロナ感染と下半身故障が重なり終盤戦を欠場。最終戦で代打で復帰していた。「由伸が頑張っていたのでなんとか追加点を取るつもりでした。由伸、すごい頼もしかったです」。昨季本塁打王が、日本一への最後のピースになる。

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