満員の神宮の夜空を切り裂いた。2-2の3回先頭、ヤクルト塩見泰隆外野手(29)はオリックス山本にカウント1-2と追い込まれたが「力負けしないように。強いスイングを」と自分に言い聞かせた。4球目。甘く来た153キロを逃さない。心掛け通りパワフルに振り抜き、バックスクリーン左横へ勝ち越しソロを放り込んだ。山本がポストシーズンで本塁打を打たれるのは初めてだった。

心掛けを守ったのは、初回先頭からだった。山本の初球155キロを左前へ。CS前、短期決戦で意識することとして、こう話していた。「本当に入りだと思う。シーズンと違って長い期間かけてやるものじゃないので、1打席1打席が大事になる。初球、1打席目、1つ目のフライを捕るだとか、そういう『1』が大事になってくる」。言葉どおり、シリーズ第1戦、第1打席、第1球、甘い球を見逃さなかった。二盗も決め、先制ホームを踏んだ。

大事な初戦でリードオフマンが躍動した。狙うはシリーズMVPか。昨年のポストシーズンの“リベンジ”をしたい。CSファイナルステージで打率4割、4打点。MVPに選ばれる気満々だったが、第1戦で完封勝利の奥川が選ばれた。アナウンスの瞬間、グラウンドで並んでいた塩見は思いっきりずっこけた。チームメートたちは大笑いで盛り上がった。

そして、迎えた今季CSファイナルステージ。「今年こそ、MVP、取りたいですね。取りましょう」と宣言した。すぐに「ウソです。ウソです」と笑って否定したが、その気がなかったはずがない。打率2割7分3厘、3四球1盗塁と奮闘したが、結果は…2本塁打のオスナがMVPに選ばれた。ならば日本シリーズこそ、MVPを。7回には二塁打も放った。2年分の思いを込めて、戦っていく。【古川真弥】

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