年の瀬が迫り、ロッテ佐々木朗希投手(21)が背広姿で登場する機会が増えている。11月末のNPBアワードに続き、12月14日は報道写真展のテープカットに登場。完全試合や160キロ台連発などで世をわかせた。今年の「顔」の1人として、オフも多くのフラッシュを浴びている。

静かに暮らす将来を描き、育ってきたという。行きたい場所を問えば「実家です」と即答し「好きだから」と重ねる。振り返れば山が広がり、ほんの少し自転車をこげば海が見える大船渡。岩手の良さは「落ち着いているところ」と、これも迷いなく即答だ。

ずっとプロ野球選手になりたかったわけではない。「小さい時にキャンプの様子とか練習の様子見て。大変そうじゃないですか」。そんな印象が強かったという。140キロ台に達した中学時代も、明確には夢として口にしなかった。

14歳だった中3夏に、Kボール(硬球と軟球の中間球)大会を経て、岩手県選抜に選ばれた。ボールがフィットしたこともあり、一気に成長。しかし当時でさえ、別の未来を想像していた。

Kボール岩手県選抜を運営した1人、下川恵司さん(63)が回想する。

「朗希には、あなたはプロになれるって言ったんです。長い間指導してきたけど、あなたのように140キロを常に投げる子は見たことがないと。選抜チームの捕手でさえ捕れませんでしたもん。とにかくダイナミック。衝撃的でした。でも彼は、介護福祉士になりたいと言ってましたね」

好きな写真を問われると「僕だけよりも、チームメートと撮られているほうがうれしいなと思います」と話すなど、物静かな一面も持ちながら、仲間思い、人を思う優しさは当時からのこと。「なぜ岩手から続々と怪物が?」のキーマンの1人でもある下川さんによる、独自の広さを持つ“岩手ゾーン”効果も加わって、自身の運命を大きく変える高校野球への礎を作っていた。【金子真仁】

【新教養】「岩手ゾーン」で思いっきり振って投げて 高内外ストライクゾーンを大開放