サトウキビ畑を揺らす風に、少しずつ暖かさがまとってきた。故郷の沖縄で汗を流す西武山川穂高内野手(31)は「毎年なんですけど、この空気を吸わないと始まらないというふうに思います」と話す。

22日、浦添市内で自主トレを公開した。少年野球チーム「美東ドラゴンズ」の子どもたちがランニングに交ざってきた。中部商でともに甲子園を目指した仲間たちが、球拾いをする。「みんなで仲良くやるのが沖縄のスタイルだと思います。来る方拒まずに、一緒に練習したいなと」。高校時代の仲間たちはなぜか記者会見にも登場し、テレビカメラに向かって爪痕を残した。

WBC出場が内定している。「さっきも同級生のみんなと話して。僕が野球を始めて、イチローさんや日本代表の選手の姿を見て、いつか必ずこの舞台に立つと思っていたので。夢の舞台でプレーできるっていうのが一番の思いですね」。10歳で野球を始め、野球のことだけを考えて21年間を過ごしてきたという。

沖縄県出身者がWBC日本代表に入るのは、初めてのことだ。今回はオリックス宮城、巨人大城も内定済み。一気に盛り上がる。山川は、そこにも強い思いがある。しみじみ話した。二重まぶたにぬくもりと強さを同居させた。

「ひと昔前だと、沖縄の選手はなかなか活躍できないと言われている時代があって。でも沖縄というのは一番苦しかった場所。唯一の地上戦があった場所なので。先代の人たちが築き上げてきたもので今、僕たちがこうやって笑いながら生活ができると。スポーツで何か恩返しができるというのは常に心の中にありますので。だからこそ、沖縄の人たちは東京に出ても、世界に出ても、絶対に負けないという気持ちで僕はやっていますので」

琉球の思い。それは「日本チームにしかできないことをやれば絶対に勝てると思う」という持論にも、シンクロしてくる。

「緻密さ、チームワーク、人を思いやる気持ち。チームの部分で言ったら、日本人の方が絶対強いと思います。日本の文化を大切にしながらで、野球がうまくて、野球をとにかく愛したメンバーがこれだけ集まるので。このメンバーが監督を中心に本当に強くなった場合は負けないでしょう。とは思います」

類いまれな長打力を日の丸に生かせるよう、故郷で備える。「自分はどちらかというと昭和の練習もあって、なおかつ今一番の、最先端の考えも加えながら」と手段に固執はない。5度目のWBC。最も盛り上がるかもしれない大会で、世界一のために尽くす。

そして、背中を示す。

「深いことは小さい子供たちは考えなくていいですけど、ただ、単純にそうやってそういう姿を見て、またこれを受け継いでいってほしいなと思います」

沖縄の英雄と触れ合った子どもたちは何を見て、何を感じたか。DNAがつながっていく。【金子真仁】

西武ニュース一覧はコチラ>>