中日涌井秀章投手(36)が、4球団目での勝利を手にした。敵地で広島打線を7回5安打3失点。1点リードを守り切って降板し、移籍後初勝利、通算155勝目をマークした。4球団で白星を挙げたのは、19年寺原(ヤクルト)以来。プロ19年目のベテラン右腕が、反攻をけん引していく。

3点を失っても、涌井はゲームをコントロールした。6回2死走者なし。4番マクブルームへ衰えない球威を見せつけた。147キロの直球で押し、124キロのカーブですかして、見逃し三振。助っ人主砲を3打席3三振に仕留め、7回の西川にソロ本塁打を被弾しても1点差を守り切った。

「一安心ですね。追いつかれても点を取ってもらった。ゲームを落ち着かせて、流れをうまく乗せるようにした」。移籍後、打線の援護がなく3戦3敗。遠かった1勝を冷静に振り返った。

横浜高からドラフト1巡目で西武に入団したルーキーイヤー。05年6月18日ヤクルト戦(神宮)で6回1失点でプロ1勝を刻んだ。「もう少し早めに勝てれば良かったですね」と、お立ち台の18歳の少年は、期待の大きさを知り言葉を選んだ。

14年4月15日西武戦(県営大宮)で移籍したロッテで初勝利を挙げた。27歳の青年は「(チームからの信頼は)これからですね」と、6年間在籍する新天地で信頼と48勝を積み重ねた。

20年6月24日、日本ハム戦(楽天生命)で7回2失点。通算134勝目で、3球団目のユニホームを着た楽天の本拠地で「はじめまして涌井です。これからもっともっと勝ちたいと思います」と、自己紹介と決意を口にした。34歳。通算150勝の大台を超え、3年間で21勝を楽天に残した。

4球団目の勝利にベンチ前でナインから祝福を受けた。在籍3球団では全て最多勝を獲得。「中日でも狙っていきたい」と、史上初の4球団目の大記録をにらむ右腕にとってはあくまでも通過点。ウイニングボールをロッカーに置いたまま球場を離れた。「楽しく投げられたのが一番」。竜のエースナンバー「20」を背負う36歳は、これからさらに輝いていく。【伊東大介】

中日立浪監督(涌井の初勝利に)「彼の素晴らしいところは、6、7回でも球威が落ちない。行けるだけのスタミナを持っている。どこの球場でも試合を作ってくれる。存在は非常に大きい」

中日細川(3回の先制適時二塁打など2安打1打点)「何とか先制点が取れてよかったです」

○…ドラフト7位の福永が3度目の5番起用に応えた。3回に大瀬良から左前適時打を放つと、5回にはアドゥワから2打席連続タイムリーの左中間二塁打。2安打2打点の活躍で「涌井さんのためにも、追加点が取れてよかった」と26歳のオールドルーキーが、36歳のベテラン右腕をアシストした。だが、5回の守備で広島韮沢の二飛を捕球した際に、右翼岡林と交錯して足を打撲。6回守備から交代し、27日の出場は状態を見て判断する。