6年ぶり出場の中部大(愛知)が快勝した。

ヒーローは大けがから復活を果たした広田陽斗捕手(4年=高岡第一)だった。昨年3月に右膝前十字靱帯(じんたい)を部分断裂。手術を経て、今年2月にグラウンドに戻ってきた。

「5番一塁」で先発した広田は初回、右中間に先制の二塁打。「打球音の響きが気持ちよかった」と東京ドームでの快打を振り返った。3回は適時中前打、5回にも二塁打を放って追加点のホームを踏んだ。

1番の佐野太陽内野手(4年=常葉大橘)、来季のドラフト候補で、前を打つ清水智裕捕手(3年=大垣日大)が警戒されていた。「いつも4番の清水に助けてもらっている。今日は自分にチャンスが回ってきたので、カバーしたかった」と、3安打2打点の活躍に充実感をにじませた。

今年、バンテリンドームでの中日戦を初体験。雰囲気にはまって4度も観戦した。中部大のブラスバンドは中日の応援歌ばかりを奏でた。生で聞くビシエドのテーマが気に入っていた広田は大会前にリクエスト。先制打の時はチャンスバージョンが流れていた。「フルスイングと逆方向に強い打球が飛ぶのが好き」というキューバ助っ人ばりの力強い二塁打だった。

愛知大学リーグの激戦を勝ち抜いてきた。転機は愛工大戦。最速154キロの中村優斗投手(3年=諫早農)に1回戦、3回戦と1点も奪えず、勝ち点を落とした。「速すぎてみんながいくら振っても前に飛ばなかった。もう、これ以上の投手はいないな、と自信を持ってそのあとの試合に臨めました」と広田。

逆に開き直れたことで、その後の中京大戦、名城大戦を4連勝。とくに2連勝しか逆転優勝の可能性がなかったリーグ最終節の名城大戦はプロ注目コンビの松本凌人投手(4年=神戸国際大付)、岩井俊介投手(4年=京都翔英)を打ち崩した。

活発な打線に、5回1失点の肥田雄策投手(2年=聖隷クリストファー)、4回無失点の津波英太郎投手(1年=四日市中央工)と、下級生投手の力投がかみ合った。

メンバーに甲子園出場経験のある選手はおらず、全員が初の全国大会。堀田崇夫監督(49)は「そういうチーム構成だから、この舞台でどういう入りになるか心配したけど、リーグ戦と同じように入れましたね」と頼もしそうに話した。快進撃の予感が漂う初戦の戦いぶりだった。【柏原誠】