杜(もり)の都はパワースポット! 阪神佐藤輝明内野手(24)がマルチ三塁打でチームを勝利に導いた。3回に満塁の走者一掃となる先制3点三塁打を放つと、5回にも三塁打。楽天マー君を攻略した。6月は打率1割台と苦しむも、祖父母の住む東北の地でお目覚めだ。チームは今季最多タイの貯金18。2位DeNAとは今季最大の6・5ゲーム差となった。

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佐藤輝が4度、手をたたいた。三塁ベース上で喜びをかみしめる。バックネット裏の一塁側上段で見守った祖父勲さん(84)、祖母美智恵さん(84)も、何度も拍手を送ってくれた。3回1死満塁で走者一掃の3点適時三塁打。「目の前で打つことができてよかったです! うれしいです」。2人の声援を力に変えた。

楽天田中将の低め149キロを片手でさばいた。ライナーで右中間を襲い、自身44打席ぶりの適時打で先制。5回にも右中間への三塁打で、プロ初の1試合2三塁打だ。日米193勝右腕とは通算9打数4安打。“マー君キラー”がチームの対田中将3年連続白星を運び、岡田監督の「対田中将連敗」を6で止めた。

2年ぶりの仙台での交流戦。2年前も現地観戦した祖父母の前で、田中将から本塁打を打った。スタンドから勲さんが、茶封筒に包んだ小遣いを手渡そうとし「いいよ、いいよ」と照れ笑いで断った思い出が懐かしい。

勲さんは「今年は(小遣いは)ないよ」とにっこり。代わりに「テルから贈り物を送ってくれるんだ」。勲さんにはお茶を、美智恵さんには花を、たびたびプレゼントする。高校までは宮城・村田町の祖父母宅への帰省が、佐藤家の毎年の恒例。勲さんのミットにボールを投げ込んだ日々が原点にある。離れていても、感謝の心は忘れない。

勲さんからは「初球から振っていけ」とアドバイスももらっていた。「なかなか頑固だから聞かない」と笑うが、孫は結果で応えてみせた。美智恵さんとは普段からLINEでメッセージを交換。「優しい子なんです。もう少し強い子になってほしい。それがプレーに出ますからね」。思いを背負って強くなる。

6月は打率1割台の男が、思い出深い「パワースポット」仙台で復活し、チームは20試合ぶりの2桁得点。2位DeNAに今季最大となる6・5ゲーム差をつけ、貯金18は今季最多タイだ。祖父から「願わくばスタンドインを」と、本塁打を求められた孫は「頑張ります!」。ヒーローインタビューで「明日も勝ちます」と宣言すると、勲さんが「佐藤輝明」とプリントされたタオルをうれしそうに振りかざしていた。【中野椋】

【動画】阪神佐藤輝明が先制の適時三塁打 観戦に来た祖父母も拍手送る